学校説明会に行くと、「お子さんに合う学校を選んでください」とよく言われます。ところが家に帰って考えてみると、うちの子の「好き」はゲームと動画ばかり、「得意」と言われても思い当たらない。そんな戸惑いを持つ保護者の方は少なくありません。
「合う学校がわからない」のは、学校の情報が足りないからとは限りません。多くの場合、わが子の側がまだ言葉になっていないことが原因です。比べる物差しが自分の中にないので、どれだけ学校を見比べても決め手が出てこないのです。
この記事では、お子さんの「好き」と「得意」を3つの層に分けて言葉にし、それが学校のどの情報と結びつくのかを整理します。偏差値や併願の組み方といった受験の進め方ではなく、その手前にある「わが子をどう捉えるか」に絞った内容です。
坂本七郎「合う学校」が決められないのは、子ども側が言葉になっていないから
学校選びで使われる情報のうち、偏差値・通学時間・学費・進学実績は数字で表せます。数字は並べれば比べられるので、判断の材料にしやすいものです。一方で「わが子に合うかどうか」には、共通の物差しがありません。
さらに、学校案内やホームページには、多くの学校が「一人ひとりの個性を伸ばす」「主体性を大切にする」と書いています。中高一貫教育はもともと、中等教育の一層の多様化を進める目的で制度化されたものです※1。学校ごとに教育の形が違うのは、その趣旨に沿った結果でもあります。ただ、掲げる言葉が似ていると、読み比べても違いが見えにくいという事情があります。
ですから、先に決めるべきなのは学校の側ではなく、家庭の側です。「何が満たされていれば、この子は伸びるのか」を先に言葉にしておくと、同じ学校案内を読んでも目に留まる場所が変わります。
学校を比べる前に、わが子を言葉にする。
言葉にできれば、学校案内のどこを読めばいいかが決まります。
「好き」と「得意」を3つの層に分ける
「好き」をひとかたまりで考えると、「サッカーが好き」「ゲームが好き」で止まってしまい、学校選びにつながりません。次の3つの層に分けて考えてみてください。
第1層:教科・分野の得意(何を学ぶと伸びるか)
算数の図形問題、生き物、歴史、絵を描くこと、音楽、体を動かすこと。学校の教科や、それに近い分野で表せるものです。もっとも思いつきやすい層ですが、学校選びで効く度合いは、実はいちばん小さい層でもあります。
第2層:活動・場面の好み(どんな場面で夢中になるか)
一人で黙々と進めるのが好きか、みんなで一つのものを作り上げるのが好きか。調べるのが好きか、手を動かして作るのが好きか。人前で発表するのが好きか、裏方で支えるのが好きか。内容ではなく「場面」で捉えるのがこの層です。
第3層:人との関わり方の好み(どんな環境なら力を出せるか)
大人と話すのが好きか、同年代の中にいるほうが落ち着くか。少人数だと安心するか、にぎやかな場所のほうが元気が出るか。注目されるのが嬉しいか、それとも負担か。自分のペースを保ちたいか、引っ張ってもらうほうが動けるか。
第1層(教科の得意)は、塾や家庭学習、オンラインの個別指導でも伸ばせます。
第2層・第3層は、行事・部活動・授業の進め方・先生との距離といった学校の日常そのものなので、入学後に家庭で補うことが難しい部分です。
教科の得意だけで学校を決めようとすると、選択肢が狭くなりがちです。「理科が好きだから理数コース」と直結させる前に、その子が理科の何を好きなのか——実験で手を動かすのが好きなのか、図鑑を読み込むのが好きなのか、誰かに説明するのが好きなのか——を第2層・第3層に翻訳しておくと、見るべき学校情報が変わってきます。
家庭でできる棚卸し——3つの質問
3つの層を埋めるために、お子さん本人に「好きなことは何?」と聞くのはおすすめしません。子どもは自分を客観的に説明する言葉をまだ持っていないので、「別にない」と返ってくることがほとんどです。かわりに、保護者の方が次の3つを書き出してみてください。
- この1年で、時間を忘れていたのはどんな場面だったか(何をしていたかより、どんな場面だったかで書きます)
- やめたがらなかったこと・嫌がらなかったことは何か(「好き」より見つけやすく、はっきり出てきます)
- 本人が「うまくいった」と口にした経験は何か(得意の芽は、たいてい本人の実感から出てきます)
※3つとも埋まらなくて構いません。1つでも書ければ、学校案内の読み方は変わります。
書き出すときのコツは、「ゲーム」「動画」で止めないことです。その何が好きなのかを一段掘ると、第2層が見えてきます。
3つの層は、学校情報のどこと結びつくのか
言葉にできたら、次はそれを学校情報に翻訳します。層ごとに、見るべき場所が変わります。
第1層(教科・分野の得意)が結びつく情報
- 選択科目やコース・類型の設け方と、選べる時期
- 実験・実技・演習にあてられている時間の量
- 授業の進度と、ついていけないときの補い方
第2層(活動・場面の好み)が結びつく情報
- 行事の企画・運営を、誰がどこまで担っているか
- 部活動の種類と、掛け持ちや途中からの参加ができるか
- 探究や研究の授業で、テーマの候補が示されるか、自分で決めることもできるか
- 校外学習やフィールドワークの位置づけ
第3層(関わり方の好み)が結びつく情報
- 1クラスの人数と、学年の規模
- 担任の持ち方と、面談の頻度
- 職員室や相談室に、生徒がどのくらい出入りしているか
- 休み時間や放課後に、一人で静かに過ごせる場所があるか
まなぶてらす学校ガイドの学校紹介では、教育の特色・授業や行事・先生との関わり方を、1校につき1ページにまとめています。同じ項目で並べているので、この3つの層を持って読むと、学校ごとの違いが見えやすくなります。
「好きがまだ見つからない」と感じるとき
ここまで読んで、「うちの子には、はっきりした好きがない」と感じた方もいると思います。ですが、小学生の段階で「これ」と決まっている子のほうが少数です。
好きがないのではなく、まだ出会っていないだけと考えるほうが、実態に近いと考えています。だとすれば、学校選びで見るところも変わります。今の好きに合う学校を探すのではなく、出会いの数が多い学校——選べる活動の種類が多く、途中から始められ、やめても次に移れる学校——を選ぶという考え方です。
坂本七郎ひとつのことをやり抜く6年間と、途中で興味が動いたときの選択肢については、やり抜く6年間と、興味が変わったときの選択肢|中高一貫校の選び方で詳しく扱っています。
説明会や学校ページで確認したいこと
3つの層が言葉になっていると、説明会での質問も具体的になります。そのまま使える言い方を挙げておきます。
- 行事の企画や運営は、生徒がどこまで決めていますか
- 部活動は掛け持ちできますか。途中から始める生徒さんはいますか
- 探究や研究の授業では、テーマの候補は示されますか。自分で決めることもできますか
- 1クラスは何人ですか。面談は年に何回ありますか
- 入学後に興味が変わったとき、選択を変えることはできますか
- 休み時間や放課後に、一人で静かに過ごせる場所はありますか
※全部を一度に聞く必要はありません。第2層・第3層に関わるものから優先してみてください。
志望校をどう組み立てるか、偏差値をどう使うかといった受験の進め方については、まなぶてらすブログの中学受験の志望校の選び方で解説しています。この記事で整理した「わが子の軸」と、そちらの「候補校の絞り方」を組み合わせると進めやすくなります。
