- 「小学校に毎日通えていないけれど、私立中学を受験できるのだろうか」
- 「合格できたとしても、中学校では通い続けられるだろうか」
- 「学校説明会では、どこまで相談すればよいのだろう」
発達特性があったり、不登校傾向にあったりするお子さんの中学受験を考えるとき、保護者にとって大きな不安の一つが「そもそも私立中学を受験できるのか」ということではないでしょうか。
私は私立中高一貫校で教員・広報担当として、中学受験を検討する多くのご家庭と接してきました。その経験からお伝えしたいのは、「受験できるか」だけではなく、「入学後にその学校で生活を続けられるか」まで考えて学校を選ぶことが重要だということです。
不登校といっても状況は一人ひとり異なります。毎日ではないものの登校できている子、別室には通えている子、長期間学校へ行けていない子など、状態はさまざまです。
だからこそ、「不登校の子を受け入れている学校」を探すだけでは十分ではありません。今回は、不登校傾向のあるお子さんの私立中学受験で、学校選びの際に確認してほしい5つのポイントを紹介します。
1.まず「受験できるか」ではなく、入試の条件を確認する
最初に確認したいのは、志望校の入試要項です。
私立中学校の入試は学校ごとに仕組みが異なり、試験科目だけで合否を判定する学校もあれば、面接や小学校からの書類提出などを求める学校もあります。
そのため、不登校で欠席日数が多い場合には、次のような点を確認しておきましょう。
- 欠席日数は合否判定に関係するのか
- 小学校から提出する書類はあるのか
- 面接では出席状況について確認されるのか
ここで大切なのは、インターネット上の情報だけで「不登校だから受験できない」と判断しないことです。受験資格や合否判定の方法は学校によって異なります。募集要項・入試要項を確認しても分からない場合は、学校へ直接尋ねるのが最も確実です。
2.「不登校への理解がある」だけで学校を選ばない
学校のホームページやパンフレットには、「一人ひとりに寄り添います」「きめ細かなサポート」といった言葉がよく使われます。もちろん、こうした教育方針は学校選びの参考になります。
ただし、発達特性や不登校傾向のあるお子さんの場合は、言葉だけでなく、実際にどのような対応ができるのかまで確認することが重要です。例えば、次のような点です。
- 朝から登校できない日は途中から登校できるか
- 教室に入れない場合、過ごせる場所はあるか
- 欠席が続いた場合、学校からどのようなフォローがあるか
- スクールカウンセラーにはどの程度相談できるか
同じ「面倒見のよい学校」でも、対応できる内容は大きく異なります。常時利用できる別室がある学校もあれば、保健室は体調不良時の利用に限られる学校もあります。オンラインで授業を配信している学校もあれば、原則として教室で授業を受けることを前提としている学校もあります。
どちらが良い、悪いということではありません。重要なのは、その学校の仕組みがお子さんの状況に合っているかです。
3.学校説明会では必ず「個別相談」を利用する
不登校傾向のあるお子さんの中学受験では、学校説明会に参加するだけで終わらせず、できるだけ個別相談を利用してほしいと思います。
全体説明では、その学校の教育方針や進学実績、学校生活などを知ることができます。しかし、自分の子どもの状況に対してどのような対応が可能なのかまでは分かりません。
個別相談では先生と1対1で話せるため、家庭の状況を踏まえて具体的に質問できます。例えば、次のような質問をしてみてください。
- 「現在、小学校には週2〜3日程度登校しています。入学後に欠席が増えた場合、どのような対応になりますか」
- 「教室に入ることが難しいとき、別の場所で過ごすことはできますか」
- 「遅刻や早退が多くなった場合、学習面のフォローはありますか」
- 「担任以外に、本人が相談できる先生やスタッフはいますか」
- 「同じように登校に不安を抱えていた生徒への対応例はありますか」
ポイントは、「不登校でも大丈夫ですか?」という聞き方だけで終わらせないことです。「大丈夫ですよ」と言われても、その「大丈夫」が具体的に何を意味しているのかは分かりません。実際の学校生活を想定して質問することで、学校側がどこまで対応できるのかが見えてきます。
4.学校の「できること」と「できないこと」の両方を聞く
個別相談では、学校がどれだけ手厚く対応してくれるかだけではなく、できないことも確認してください。
例えば、次のように、学校にはそれぞれ対応の限界があります。
- 「毎日の別室登校には対応できない」
- 「オンライン授業は行っていない」
- 「欠席した授業をすべて個別に補習することは難しい」
- 「常時マンツーマンで教員が付き添うことはできない」
こうした説明を聞くと、「この学校は冷たいのでは」と感じるかもしれません。しかし、学校側が自校でできることとできないことを明確に伝えてくれることは、入学後のミスマッチを防ぐうえで非常に重要です。
むしろ注意したいのは、具体的な状況を確認せずに「全部大丈夫ですよ」「入学してから考えましょう」とだけ回答されるケースです。個別相談では、「反対に、学校として対応が難しいことはありますか?」と聞いてみるのもおすすめです。
5.「入学できる学校」より「通い続けられる学校」を選ぶ
中学受験をしていると、どうしても「合格できるか」が最大の関心事になりがちです。しかし、不登校傾向のあるお子さんの場合は、合格した後の6年間についても考えておく必要があります。
学校を見学したときには、次のような点も見てほしいと思います。
- 本人は校内に入ったときにどんな様子だったか
- 教室の人数や雰囲気に負担を感じていないか
- 通学時間は無理のない範囲か
- 困ったときに相談できそうな先生がいるか
- 本人自身が、この学校なら通ってみたいと思えているか
保護者にとって魅力的な学校と、お子さん本人が安心して過ごせる学校が必ずしも同じとは限りません。進学実績や偏差値、教育内容だけでなく、実際に6年間通う本人の視点から学校を見ることも大切です。
特に、不登校の経験がある場合、「せっかく合格したのだから毎日通わなければ」と本人も保護者も頑張りすぎてしまうことがあります。だからこそ受験前の段階で、登校が安定しなかった場合にどのような選択肢があるのかを確認しておくことが、安心につながります。
個別相談は「受け入れてもらえるか」を確認するだけの場ではない
私立中学校の個別相談というと、「うちの子でも受け入れてもらえるでしょうか」と学校側に許可を求めるような場だと感じる方もいるかもしれません。しかし、本来は保護者側も学校を見極める場です。
本人の状況を伝えたとき、先生が丁寧に話を聞いてくれるか。その場で分からないことを、ほかの先生に確認してくれるか。できることだけではなく、できないことも説明してくれるか。こうした対応そのものが、学校を選ぶ材料になります。
私が学校で広報を担当していた際にも、受験前には相談がなく、入学してから初めて不登校の経験や発達特性について詳しい状況を知るケースがありました。保護者からすれば、「受験前に話すと不利になるのではないか」という不安があったのだと思います。
ただ、学校側としては事前に相談してもらうことで、入学後の準備を進めやすくなります。首都圏の中学入試は2月に実施される学校が多く、合格から4月の入学までは約2か月あります。その期間に、本人の状況を改めて確認したり、担任や学年の先生と情報を共有したり、困ったときの相談先を検討したりすることができます。
学校に相談することは、合格の可能性を下げるためのものではなく、入学後のミスマッチを減らすためのものだと考えてください。
「その子に合う学校」を探すことが、中学受験では大切
不登校だから私立中学を諦めなければならない、ということではありません。一方で、「私立なら面倒を見てくれるだろう」と考えて学校を決めるのもおすすめできません。学校ごとに教育方針も、教員体制も、対応できる支援も異なります。
だからこそ、次の5つの視点から学校を見てみてください。
- 入試条件を確認する
- 具体的な支援体制を見る
- 個別相談を利用する
- できない対応まで確認する
- 入学後に通い続けられるか考える
そして、可能であれば複数の学校で個別相談をしてみることをおすすめします。同じ相談をしても、学校によって回答は異なります。その違いを比較することで、「どの学校なら本人が安心して過ごせそうか」が少しずつ見えてきます。
中学受験の学校選びで大切なのは、単に合格できる学校を探すことではありません。お子さん自身が「ここなら通ってみたい」と思え、保護者も「困ったときには学校と相談できそうだ」と感じられる学校を見つけることです。
