小学校高学年で不登校の状態が続いているお子さんの中学進学について、「このまま学区の公立中学に進むか、私立中学を受験するか」で悩む保護者の方は少なくありません。とくに小学5・6年生のご家庭では、「今と同じ地区の子どもたちと、また同じ中学校に通うのはつらい」という理由から、私立受験を決意されるケースも多くあります。

文部科学省の調査によると、小・中学生を合わせた不登校児童生徒数は2025年10月公表の最新調査(令和6年度)で35万3,970人と12年連続で増加し、過去最多を更新しています(前年度から7,488人増)※1。その中には、小学校高学年で不登校の状態にあるお子さんも数多く含まれます。

なお、すでに公立中学に通っているお子さんが不登校を理由に私立へ転校(編入)するのは、多くの学校で転勤や海外からの帰国が条件とされており、実際には狭き門です※3。一方、まだ小学生のうちに通常の中学受験を経て私立へ進学するのは、誰にでも開かれた選択肢です。この記事では、中学進学というタイミングで公立と私立のどちらを選ぶかという視点に絞って、支援の仕組み・メリットと限界・確認しておきたいチェックポイントを、不登校相談歴20年以上のさとしん先生の監修で整理しました。

さとしん先生さとしん先生
「今の友達関係から少し距離を置きたい」というお子さんの気持ちは、決して逃げではありません。中学から環境を選び直すことも、立派な選択肢のひとつですよ。

まず知っておきたい、公立と私立の「支援のしくみ」の違い

比較の前提として押さえておきたいのが、スクールカウンセラー(SC)の配置のされ方です。ここは公立と私立で仕組みそのものが異なります。

公立の小・中学校(全国約27,500校)には、国のスクールカウンセラー等活用事業により、週1回・おおむね4時間程度の配置が制度として進められてきました※2。学校ごとの判断に左右されにくい、全国一律の下支えがあるということです。

一方、私立学校はこの事業の直接の対象ではなく、都道府県が行う「私立学校振興助成法」に基づく助成の枠組みを通じて、間接的にSC配置を支える形になっています※2。つまり、SCを置くかどうか・どのくらいの頻度にするかは、学校ごとの方針次第で差が大きいということです。

ここが比較の出発点

公立=制度による下支えが手厚く、学校間の差が出にくい。
私立=学校の方針次第で差が大きく、良い意味でも「思い切った体制」を持つ学校もあれば、そうでない学校もある。

良し悪しではなく、私立を受験する場合は「この学校は実際どうなのか」を個別に確認する必要があるという結論になります。学校ガイドの個別校の取材記事でも、この点を確認しています。

公立中学に進学するメリットと知っておきたい限界

メリット

  • 選抜がなく、学費もかからない:学区で自動的に決まるため、受験の負担なく進学できます。
  • 受験そのもののプレッシャーがかからない:無理をさせたくない時期に、新たに受験勉強という負荷をかけずに進学できます。
  • SCの配置が制度で下支えされている:前述の通り、多くの学校で一定の相談体制が期待できます。
  • 公立を中心とした「学びの多様化学校」の広がり:不登校の児童生徒向けにカリキュラムや時間割を柔軟にした学校・分教室(不登校特例校)が、公立を中心に増えています。

知っておきたい限界

  • 学校そのものを選べない:学区で機械的に決まるため、小学校時代とほぼ同じ顔ぶれの中学校になりやすく、「環境を変えたい」という希望は叶いにくい面があります。
  • 担任やSCが数年で異動する:せっかく関係を築けても、人事異動でリセットされることがあります。
  • クラス規模が大きい学校も多い:少人数での関わりを重視したい場合、学校によっては物足りなさを感じることもあります。

私立中学を受験するメリットと知っておきたい限界

メリット

  • 通学区域に縛られない:学区とは違う地域からも生徒が集まるため、これまでと違う顔ぶれの中で新しいスタートを切りやすくなります。「同じ地区の子とまた同じ中学に通うのがつらい」という悩みへの、現実的な選択肢になります。
  • 建学の精神や校風で選べる余地がある:多様な学びや個別対応を掲げる学校を、選択肢として探すことができます。
  • 少人数指導や独自の別室体制を持つ学校もある:学校ごとの工夫が制度的な制約を受けにくい面があります。
  • 教職員が異動しにくく、関係が継続しやすい傾向:担任や相談担当との関係が長く続きやすいケースがあります。

知っておきたい限界

  • 入学には選抜がある:学力試験や面接が必要な学校が多く、不登校の状態からの受験勉強や、面接での配慮の相談が欠かせません。
  • 学費がかかる:家庭の条件として現実的に比較しておく必要があります。
  • SC配置や相談体制は学校ごとの裁量:「本当に相談できる体制か」を、パンフレットだけでなく個別に確認することが欠かせません。
さとしん先生さとしん先生
私立だから安心、公立だから物足りない、と決めつけないことが大切です。同じ「私立」でも、学校によって相談体制はかなり差がありますよ。

「うちの子にはどちらが向いているか」を考えるチェックポイント

公立・私立という前提を比べたら、次は個々の学校を見るときの確認項目です。学校説明会や個別相談の前に、次の項目を整理しておくと聞き漏らしを防げます。

学校選びで確認しておきたいこと
  • 相談窓口はどこか(SCが常駐する曜日・頻度、担任経由での相談の流れ)
  • 別室登校・オンライン併用など、実際の受け入れ実績があるか
  • 出願する学校が、出席日数や小学校での様子をどの程度重視しているか(学校によって差が大きい)
  • 入学後に合わないと感じた場合、相談や転校のしやすさはどうか
  • 学費・通学時間など、家庭にとって現実的に続けられる条件か
  • お子さん本人が学校の雰囲気をどう感じるか(可能であれば体験や見学で確認)

※すべて一度に確認できなくても大丈夫です。優先度の高いものから聞いてみましょう。

私立中学の入試で、出席日数や内申はどう扱われる?

受験を考えるうえで気になるのが、小学校での欠席日数や調査書が、私立中学の入試にどう影響するかだと思います。

私立中学はそもそも調査書の提出を求めない学校も多く、求める場合でも、合否への影響は大きくないと言われています。学力試験の得点が中心の学校が大半です。

ただし学校差があり、出席日数や小学校での集団生活の様子を参考にする学校もあります。特別な理由のない長期欠席が響く場合もあるため、志望校がどこまで重視するかは、募集要項の確認や個別相談で必ず確認しておくことをおすすめします。

確認のヒント 学校説明会や個別相談の際に「欠席が多いのですが、選考にどう影響しますか」と直接尋ねて大丈夫です。学校によって答え方の違いそのものが、相性を見極める手がかりにもなります。

個々の学校の受け入れ体制について詳しく知りたい方は、学校ガイドの学校紹介一覧もあわせてご覧ください。

よくある質問

小学校でうちの子だけ不登校気味で、公立に大きな不満があるわけでもないのですが、それでも私立中学を受験してもいいのでしょうか?
もちろん構いません。公立と私立は「どちらが優れているか」ではなく、お子さんに合う環境や、新しいスタートを切れるかどうかで考えるものです。「同じ地区の子どもたちとまた同じ中学に通うのがつらい」という理由だけでも、私立受験を考える十分な理由になります。
私立は不登校の子に厳しいというイメージがあるのですが、本当ですか?
基本的には、そのようなイメージ自体が実態とは異なります。学校が「不登校の子には厳しく対応する」という方針をあえて掲げることは基本的にありません。建学の精神として多様な学びを積極的に受け入れている私立校も多く、まなぶてらす学校ガイドでも、各校への取材で受け入れの姿勢を確認しています。
公立の「不登校特例校(学びの多様化学校)」とは違うのですか?
不登校特例校(学びの多様化学校)は、不登校の児童生徒向けにカリキュラムや時間割を柔軟にした学校・分教室で、公立を中心に設置が進んでいますが、私立で設置されている例もあります。通常の公立・私立の比較とは別の選択肢として、あわせて検討する価値があります。
受験するかどうか迷っています。まず何から始めればいいですか?
まずは、今の小学校の担任やスクールカウンセラーに現状を相談しつつ、志望校候補の学校説明会や個別相談に参加してみることをおすすめします。出席日数や調査書の扱いは学校によって差があるため、早めに直接確認しておくと安心です。
公立中学に入ってから、不登校を理由に私立へ転校することもできますか?
私立中学の編入(転入学)は欠員が出た場合に限られ、多くの学校が転勤や海外からの帰国を条件としており、成績や学校が合わないといった理由での編入は狭き門です。私立を検討するなら、まだ小学生のうちに通常の受験を経て進学するほうが、選択肢は大きく広がります。
参考文献 ※1 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果概要」(2025年10月29日公表)。数値は小・中学校における不登校児童生徒数。
※2 文部科学省「「スクールカウンセラー」について」等の公表資料に基づく。私立学校への支援は都道府県による「私立学校振興助成法」に基づく助成の枠組みを通じたもの。配置状況は学校・自治体により異なります。
※3 一般財団法人 東京私立中学高等学校協会「転・編入試験について」。多くの私立中学の編入(転入学)試験は、転勤・転居や海外からの帰国を応募条件としており、それ以外の理由での募集は限られる傾向があります。