受験が近づくと、「習いごとや好きなことは少しお休みして、勉強に集中させたほうがいいのでは」と迷う方もいると思います。よい学校に進んでほしいと願う気持ちは、私も父親の一人としてよく分かります。

そのうえで、私が教育で大切にしている考え方をひとつお伝えしたいと思います。「好き」や「得意」を伸ばして生まれた自信は、その分野の中にとどまらず、やがて勉強にもつながっていくということです。好きなことの時間は、勉強と取り合う相手とは限りません。

この記事では、その考え方をお話ししたうえで、学校選びの場面で「子どもの自信を育てる仕組みがあるか」をどこで確かめればよいかを整理します。

坂本七郎坂本七郎
勉強以外の分野で「自分にもできた」と感じた子は、「勉強も、やればできるかもしれない」と思えるようになることがあります。その感覚が、苦手な教科に向かうときの足場になると、私は考えています。

「好き」「得意」で生まれた自信は、勉強にもつながっていく

子どもは一人ひとり、得意なところと苦手なところが違います。その違いは白か黒かで分けられるものではなく、グラデーションのように少しずつ重なっています。ところが勉強は、全員が同じ内容に取り組み、点数で比べられやすい分野です。勉強が苦手な子ほど、「自分はできない」という感覚を学校生活の中で積み重ねやすくなります。

そんな子が、勉強以外の分野で「できた」を経験するとどうなるか。絵を描くこと、楽器、スポーツ、生き物の飼育、プログラミング。何でも構いません。ひとつの分野で認められた経験は、「自分にも、やればできることがある」という自信になります。その自信が、やがて「勉強も、やり方しだいでできるかもしれない」という気持ちにつながっていきます。

もうひとつ、好きなことを深く掘り下げた子には、知らないことを自分で調べ、試し、身につけていく経験が残ります。「どうやって知らないことを学んでいくか」という学び方そのものが身につくのです。これも、教科の勉強に生きてくると考えています。

この記事の考え方

好きなこと・得意なことで育つのは、その分野の力だけではありません。
「自分にもできる」という自信と、知らないことを学んでいくやり方。この2つが、やがて勉強にもつながっていきます。

学力を伸ばすという目標は、そのままでいい

誤解のないようにお伝えすると、私は「勉強はほどほどでいい」と考えているわけではありません。学力を伸ばしたい、志望校に合格させたい、という目標はそのまま持っていてよいものです。お伝えしたいのは、その目標にたどり着く道が、教科の勉強だけとは限らないということです。

また、「好きなことだけやっていればいい」とも考えていません。続けていれば、苦しい場面や退屈な時期は必ずやってきます。苦手なことに向き合う忍耐力と、つらさの中に楽しさを見つける柔軟性があってはじめて、その子の力は深まっていきます。好きなことで得た自信は、その苦手に向き合うための土台になるものだと考えています。

坂本七郎坂本七郎
勉強だけでなく、習いごとや好きなこと、得意なことを伸ばしてあげたい。そういう機会もあったほうが、結果的に全部が伸びていくと思っています。

学校選びで見たいのは「自信が育つ仕組み」

中学・高校の6年間は、子どもが自分をどう見るかが大きく形づくられる時期です。だからこそ学校選びでは、設備や実績に加えて、得意を自信に変えていく仕組みが、学校の日常の中にあるかを見ておきたいところです。手がかりは、次の4つです。

1. 得意を認めてもらえる場があるか

自信は、自分ひとりで「できた」と思うだけでなく、誰かに認めてもらうことで確かなものになります。授業や行事での発表、作品の展示、校内での表彰、全校の前で紹介される機会。こうした場が、どのくらいの頻度で、どのくらいの人数に開かれているかを見てみてください。一部の目立つ生徒だけでなく、多くの生徒に出番が回る仕組みになっているかが大切です。

ただし、認められ方の合う・合わないは子どもによって違います。人前で発表するのが励みになる子もいれば、注目されることが負担になる子もいます。機会の多さだけで比べず、裏方の役割や、先生からの個別の声かけなど、お子さんに合った形で認めてもらえるかもあわせて見てください。

2. 点数以外の見方で評価されるか

定期テストの点数はもちろん大切です。そのうえで、探究や研究の発表、作品、取り組みの過程といった、点数とは別の形で努力が評価される場面があるかを確かめておくと安心です。テストでは目立たなくても、別の場面で力を発揮できる子にとって、それが自信の入り口になります。

3. 学校の外へ挑戦しやすいか

大会、コンクール、検定、作品の公募など、学校の外で力を試す機会は、得意を伸ばす大きなきっかけになります。学校がそうした情報を生徒に届けているか、挑戦する生徒を先生が後押ししているか、校外の活動と学校生活を両立しやすいか。得意な分野に打ち込む子への、学校の関わり方が分かる部分です。

4. 苦手な教科を補う手立てがあるか

得意で生まれた自信を勉強へつなげるには、苦手な教科で置いていかれない仕組みも欠かせません。補習や質問の時間、習熟度に合わせた授業、つまずいたときに相談できる先生との距離。苦手でも「やればできる」と思える経験が積める環境かどうかが、得意で育った自信を勉強へつなげる橋渡しになります。

部活動の続けやすさや、探究のテーマの決め方については、やり抜く6年間と、興味が変わったときの選択肢|中高一貫校の選び方で詳しく扱っています。お子さんの「好き」と「得意」をどう言葉にするかは、子どもの「好き」と「得意」から学校を選ぶ|3つの層に分けて考えるを参考にしてください。

説明会や個別相談で聞いてみたいこと

学校案内には「個性を伸ばす」「一人ひとりを大切にする」といった言葉がよく並びます。実際の様子をつかむには、具体的な場面を聞いてみるのが近道です。

説明会・個別相談で聞いてみたいこと
  • 生徒が授業や行事で発表する機会は、1年にどのくらいありますか。人前に出るのが苦手な生徒には、どのような関わり方がありますか
  • テストの点数以外に、どのような形で生徒の取り組みを評価していますか
  • 校外の大会やコンクールに挑戦する生徒さんは、どのくらいいますか。学校からの後押しはありますか
  • 授業についていけなくなったとき、補習や質問の時間はありますか
  • 勉強以外の分野で活躍している生徒さんの様子を教えてください

※最後の質問は、その学校が生徒の得意をどう育てているかを具体的に知る手がかりになります。

まなぶてらす学校ガイドの学校紹介では、教育の特色や授業・行事の様子を、1校につき1ページにまとめています。上の4つの手がかりを持って読むと、学校ごとの違いが見えやすくなります。

入学後の「好き」と勉強の両立を確かめる

中学・高校に進むと、勉強の量も、部活動や校外の活動にかける時間も増えていきます。好きなことを続けながら勉強にも向き合えるかは、学校の仕組みによって変わる部分があります。説明会や個別相談では、次のような点も確かめておくと、入学後の6年間を想像しやすくなります。

  • 定期テストの前に、部活動をお休みする期間があるか
  • 校外の大会やレッスンなどの活動を、学校がどのように扱っているか
  • 活動と勉強の両立に悩んだとき、担任の先生などに相談できる場があるか
坂本七郎坂本七郎
今やっていることが将来何の役に立つかを、早くから決めつける必要はありません。深く打ち込んだ経験は、思いがけない形で、ほかの分野や勉強とつながっていきます。

よくある質問

入学後も、好きな活動と勉強を両立できるか心配です。学校にはどう確かめればいいですか?
定期テスト前に部活動をお休みする期間があるか、校外の活動を学校がどう扱っているか、両立に悩んだときに相談できる先生がいるかを聞いてみてください。制度があるかどうかに加えて、実際に両立している生徒さんの様子を聞くと、学校の日常が見えやすくなります。
得意なことが、勉強とまったく関係のない分野です。それでも意味はありますか?
あります。得意な分野で生まれる「自分にもできる」という自信と、知らないことを学んでいくやり方は、分野を問わず、勉強へつながっていくことがあります。勉強とのつながりが見えなくても、深く打ち込んだ経験そのものに価値があります。
人前に出るのが苦手な子です。得意を認めてもらえる場はあるのでしょうか?
発表や表彰だけが、認めてもらえる場ではありません。裏方の役割や、作品・取り組みへの先生からの個別の声かけが励みになる子もいます。説明会や個別相談で、人前に出るのが苦手な生徒にどのような関わり方をしているかを聞いてみてください。
子どもが苦手な教科が多く、自信をなくしています。どこから始めればいいですか?
まずは、勉強以外も含めて、お子さんが「できた」と感じられる場面を一つ見つけることから始めてみてください。学校選びでは、補習や質問の時間など、苦手を補う手立てがあるかもあわせて確かめておくと安心です。