講師ブログ

「梅雨」だからこそ確認・体感したい 日本の天気・気象

まなぶてらす講師の「うえむら」です.じめじめした天気が続いていますが,7月に入り梅雨も後半戦.今回は,そんな梅雨を題材に,梅雨の原因や仕組み,梅雨の天気図の調べ方や特徴,災害の危険性,梅雨と意外な山脈との関係をまとめました.受験生はもちろん,理科に興味・関心がある子どもや大人が,梅雨を実感したり,梅雨特有の自然現象を観察したりするきっかけになれば嬉しいです.

梅雨の季節の生き物といえば,アジサイにカタツムリ・・・季節ごとにいろんな生物が見られるのも,季節の変化が豊かな日本ならではです.湿度の高いこの気候に対応するため,生活に様々な知恵が生まれ,日本文化が豊かになってきた面もあります.うっとうしいと言われる季節ですが,梅雨だからこそ感じる,楽しめることもありそうです.

 

雨が降るのはどんなときか?

まとまった範囲の空気が上昇すると,水蒸気が凝結して雲ができやすくなります.そうすると,雨も降りやすくなります.(詳しい説明は他の季節にしたいと思います)「空気が上昇⇒雲ができる」という図式です.では,空気が上昇するのは,どんなときでしょう.

① 太陽の熱で暖められた空気が上昇する

② 山の斜面などに沿って空気が上昇する

③ 低気圧付近で空気が上昇する

④ 前線付近で空気が上昇する

①の例として街中に現れた入道雲(積乱雲)の写真です.夏の午後,太陽で熱せられた空気が激しく上昇し,入道雲(積乱雲)を作ることがあります.いわゆる夏の夕立です.

 

①~④が主な原因ですが,梅雨と関係するのは④の前線です.前線は,広範囲にわたって似た性質を持つ空気の塊(気団)が,互いにぶつかるところなどに発生します.暖かい気団と冷たい気団がぶつかると,暖かい空気は軽いので,冷たい空気の上になろうとして,上昇させられます.「空気が上昇⇒雲ができる」で,前線は雨を降らせます.梅雨は,この前線によってもたらされます.

 

なぜ梅雨は雨ばかり続くのか?~前線の種類

前線の種類は4つあります.寒冷前線,温暖前線,閉そく前線,停滞前線の4つです.言えた人は素晴らしい!(停滞前線以外は春か秋の天気で説明します) これらの中でも,停滞前線は少し特徴が異なり,気団同士の勢力が似通っていいます.2つの気団がぶつかり合ったまま,なかなか勝負のつかない相撲のようになります.そのため,長く同じ場所に停滞するのが特徴で,雨の日が続くのです.

このような停滞前線は,天気図で確認できます.インターネットで「気象庁 過去の天気図」と検索してみてください.気象庁のサイトでは,次のように「過去の天気図」を閲覧できます.民間の気象関係のサイトでも同じようなことができます.

引用:気象庁ホームページ https://www.jma.go.jp/jma/index.html

 

上記のサイトで,最近の天気図(6月から7月にかけて)を調べてみてください.毎日ではありませんが,下の例のように停滞前線が伸びていることが確認できます.前線に沿って雲や雨が帯状に分布し,そういう日が続きます.教科書や資料集の写真ではなく,是非,日々の天気予報やインターネットで,この時期にこそ自分で調べてみてください.

引用:気象庁ホームページ https://www.jma.go.jp/jma/index.html

引用:日本気象協会ホームページ https://tenki.jp/

梅雨前線を作る気団

梅雨にかかわる気団は,夏に向けて勢力を伸ばしていく小笠原気団と,この時期に特徴的にできるオホーツク海気団です.気団の性質は,気団が発生する場所の性質で決まります.小笠原気団は南の海でできるので,温暖(=南)で湿潤(=海)です.同じようにオホーツク海気団(※よくテストで「海」が抜けます!)は,オホーツク海でできるので,寒冷(=北)で,湿潤(=海)です.南からやってくる小笠原気団と,北東でできるオホーツク海気団がぶつかって,せめぎあっているのが梅雨前線です.そういうイメージで,もう一度,調べた天気図や雲画像を見てみてください.気団を相撲の力士に例えましたが,年によっては力士の状態も変わり,毎年強い気団が今年は少し弱いこともあります.そのようなバランスで,あまり雨の降らない梅雨(空梅雨)が起きることもあります.

 

梅雨に気を付けたい水害

上の天気図は,長崎県での豪雨がニュースになった28日の天気図です.ホットな時事として学習内容を確認するのはおすすめです.この時期の大雨は,洪水や土砂災害にもつながるため,日常生活でも注意が必要です.台風が近づいたりして,梅雨前線に南から湿った空気が入り込むと集中豪雨となります.最近では,TV等で警戒を呼びかける情報が増えましたが,それでも災害に対して意識を高く持つことは難しいものです.「こんな水害は初めてだ」とか「こんなことになるなんて」という話は,そういう感じ方が関係するのでしょう.自然災害の対策は難しい問題ですが,近くに川がある場合,まとまった雨が降ったときに,下の写真のように比較してみてください.雨が降ることで川の水位が上昇し,様子が変わることがわかります.ただし,大雨の時は近づいてはいけません.

 

まとまった雨が降った翌日の様子(上)さらに翌日は水量が減っています(下)

 

梅雨には意外な山脈が関係している!!

最後に少し発展的なお話をします.梅雨の原因となるオホーツク海気団は,日本上空を吹くジェット気流が関わっています.梅雨の時期は,このジェット気流が2つに枝分かれして,オホーツク海で合流し,そこにオホーツク海気団ができます.実は,ジェット気流を2つに分断するのが…なんとヒマラヤ山脈やチベット高原です.これらの高地は,インドがユーラシア大陸にぶつかってできました.そんなダイナミックな地球の歴史が,梅雨には隠れているのです.

1年間の様々な現象を扱う気象分野は,話題となるときに授業があるとは限りません.今後も季節ごとに,ホットで実感のわく話題を書きたいと思います.このようなレッスンも可能ですのでどうぞご検討ください.

ABOUT ME
うえむら
まなぶてらす講師 うえむら 大学・大学院で地学(地球科学)を専攻し,水循環などを研究する水文学,特に地下水の研究を行いました.そのフィールドは,熊本,大阪,駿河湾,黒部川扇状地,琵琶湖,さらには,南極観測まで参加させてもらいました.その後,13年間,中高教員として地学を中心に指導.現在,児童福祉関係のNPOに勤務しながら,教科書・教材編集やオンライン家庭教師を中心に教育にも関わっています.地球や宇宙,自然一般の話が好きで,受験や定期試験対策以外にも,広く教養や興味関心を育てる指導できればと思っています.