不登校

不登校の中学生の進路は高校だけじゃない!「6つの進路」について知っておこう

不登校の中学生は進路は高校だけじゃない!「6つの進路」について知っておこう

不登校は年代問わず子ども、そして周囲の大人を大きく悩ませるものですが、特に深刻になりやすいのが「不登校の中学生の進路」です。日本は「どの高校に通うのか」で人生が大きく変わってくるため、以下のような悩み、不安を抱えてしまうことでしょう。

  • 不登校でも進学できるの?
  • 普通の高校に行かなくても大丈夫なの?
  • 子どもにとって最適な進路はなんだろう?

私たちは、「まなぶてらす」というオンライン家庭教師サービスを運営しており、その中で「不登校支援」に力を入れています。

この記事では、「不登校の中学生の進路」というテーマについて、単に進路を紹介するだけでなく、現場の経験や感覚に基づいて、できるだけ具体的に深掘りしていきます。

不登校や進路のことで悩む方々の助けになれば幸いです。

これからの日本は「普通に高校に通う」ことは「普通でなくなる」

これまでの日本は、さまざまなことが「普通」という枠組みにとらわれていました。とりわけ教育分野では、この「普通」という価値観が子どもの人生に大きな影響を与え、「普通に生きれない子どもたち」の心を強く傷つけてきたはずです。

その中でも、「普通に学校に通う」ことが難しい子どもにとっては、この上なく苦悩を抱える社会だったことは言うまでもありません。そして現在も、傷つき、苦しんでいる子ども、そして保護者は多いはずです。

そこでまず知っておいていただきたいのが、普通に高校に通うこと、あるいは普通の高校に通うことは、私たちが考えている以上に「普通でなくなってきている」ということです。

着実に進む「通信制高校」へのシフト

まずお話をわかりやすくするために、ここでは高校を以下の3つに大まかに分類します。

  • 全日制高校
  • 定時制高校
  • 通信制高校

ご存知の方も多いと思いますが、簡単にまとめると、全日制高校はいわゆる普通の高校、定時制高校は夜間の高校、そして通信制高校は登校を必要としない高校、のことです。

そして、文部科学省の「学校基本調査」によれば、平成元年から令和元年にかけて、それぞれの高校に在籍する生徒の数は以下のように変動していることが明らかになっています。

高校 平成元年 令和元年
全日制高校 550万 310万
定時制高校 15万 8万
通信制高校 16万 20万

参考:学校基本調査 平成元年度 – e-stat

参考:学校基本調査 令和元年度 – 文部科学省

ご覧のように、全日制高校(普通の高校)に通う子どもの数は大きく減少しているのに対し、通信制高校に通う子どもは16万人から20万人へと数を増やしていることがわかります。

言うまでもなく、平成元年から令和元年の間に、日本は少子高齢化で子どもの数を大きく減らしており、なおかつ人口そのものも大きく減っているため、高校に通う子どもの数は「減っていくのが当たり前」です。

にも関わらず、「普通ではない」と言われ続けてきた通信制高校へと通う子どもの数が減るのではなく、「むしろ増えている」ことは、紛れもなく「普通が普通でなくなってきた」「普通が変わってきた」ことを強く示唆しています。

社会情勢や価値観の変化がシフトを後押しする可能性も

なぜこのような「通信制高校へのシフト」が生じているのかについてはさまざまな要因があるとは思いますが、今後このシフトが「社会情勢の変化」により急激に進む可能性があります。

ご存知の通り、世界的な感染症の影響により、子どもだけでなく人類全ては「対面しない」という選択肢を取らざるを得ませんでした。その中で不可抗力的に進んだ「教育のオンライン化」は、当初こそ「対面しないとダメ」といった保守的な考えに支配されていましたが、今では「対面しなくても全然大丈夫じゃん」といった流れが生まれてきています。

そして、この流れが社会全体に波及してくる中で、多くの子ども、そして保護者の頭の中では「対面する(登校する)価値の見直し」が始まっているはずです。

  • 対面しなくても学力は上がるんじゃないの?
  • 無理して登校する必要はないんじゃないの?
  • そもそも学校って必要?

具体的にはこのようなもので、「学校の必要性」すら議論の対象になることも珍しくありません。

したがって、平成から令和の時代にかけて「少しずつ」進んだ通信制高校へのシフトは、社会情勢の急激な変化に伴うリモート化、オンライン化、そして価値観の変化により、今後より一層「極めて急激に」進んでいくことになるでしょう。

「普通」を無理して追い求めるのはやめよう

このように、中学生の進路は平成から令和の時代にかけて大きな変化を見せているため、少なくとも教育分野においては「普通」という概念が通用しなくなる日もそう遠くないはずです。

そんな中で、「学校に通えないこと」「普通の高校へと進学できないこと」にこだわり、そして苦しむことは、果たして正しいことなのでしょうか?個人の価値観による部分が大きいので一概には言えませんが、「オンライン家庭教師」という新しい時代の教育に携わっている私たちの目線に立つと、「正しいことだとは思えない」というのが本音です。

言い換えれば、「それぞれの子どもに合った選択をすれば良い」という価値観が、「これからの時代の普通になる(なって欲しい)」と言えます。

中学から高校への進路は想像以上に多様

では、これまでの当たり前であり、普通だった「全日制高校」という進路以外に、具体的に中学から高校への進路にはどのようなものがあるのでしょうか?

文部科学省は、中学を卒業した後の子どもたちの進路として以下の10個を掲示しています。

  1. 全日制高等学校
  2. 定時制高等学校
  3. 通信制高等学校
  4. 高等専修学校
  5. 専修学校一般過程
  6. 高等専門学校
  7. 特別支援学校
  8. 各種学校
  9. その他民間教育施設
  10. 公共職業能力開発施設

一般的には「高校に行くか行かないか」だけが中学生の進路だと思われていますが、実はこんなにも多様な進路が用意されていて、多くの子どもたちが「普通の高校」以外の選択肢へと進んでいるのです。

したがって、不登校の子への進路選択は「想像以上に多様性がある」ことを頭に入れた上で、子どもにとって最善の選択肢を選ぶことが大切です。

不登校の中学生に最適な進路とは?

ここからは、不登校の中学生に最適な進路を具体的に解説していきます。先述のように、中学生の進路には大きく分けて10個の進路があることをお伝えしましたが、その全てが不登校の子に合うかと言えば、決してそんなことはありません。

したがって、この章では上記10個の進路の中から、不登校の子に合う進路にフォーカスして解説をしていきます。

  • 全日制高校
  • 定時制高校
  • 通信制高校
  • 高等学校卒業認定試験(高認)
  • 高等専修学校
  • 就職

以上6つについて、順番に見ていきましょう。

全日制高校

不登校の子の進路を考える上で、避けては通れないのが「全日制高校」です。いわゆる「普通の高校」のことで、これからの時代は普通にこだわる必要はないとは言ったものの、やはり「普通の高校に通えるなら、通いたい/通って欲しい」と子ども、保護者が考えてしまうのもまた事実です。

では、果たして全日制高校は不登校の子に最適な進路だと言えるのでしょうか?

これは、「人による」というのが一般的な結論です。

これまでに不登校を経験していると、「学校に通わないこと」に抵抗がなくなり、高校へと進学してもずるずると不登校を継続してしまうケースもありますし、逆に環境が一変すること、あるいは人間的な成長など、さらには新たな友人関係の構築などさまざまな要因により、中学時代とは見違えるように活き活きと高校へと通う子どももいるからです。

「不利な選択」になりやすい

したがって、「通ってみなければわからない」からこそ悩ましい部分がありますが、少なくとも言えるのは、不登校の子の全日制の高校選択は「不利な選択になりやすい」です。

高等学校には全日制高校、定時制高校、通信制高校の3つの選択肢がありますが、この中でも全日制高校は「出席日数」を非常に重く見ます。詳細は都道府県によって異なり、入試の時に提出する調査書に記載する出席日数については、関東圏では以下のような対応にわかれています。

都道府県 出席日数への対応
東京都 中学3年のみ
千葉県 中学3年間全て
埼玉県 中学3年間全て

そしてさらに、「出席日数をどう評価するのか」はそれぞれの高校によって異なり、「欠席日数が〇〇日以上の場合は審議の対象とする」とったように、減点対象となる出席日数は大きく異なるため、不登校の子の入試では下調べが重要です。

一般的には、公立よりも私立の方が出席日数に対して寛容であるため、私立を選択することも視野に入れると良いでしょう。

いずれにせよ、不登校の子は入試で不利な戦いを強いられやすいため、本来持っている学力よりも、数段階下の高校への選択をする必要があります。無理をして全日制高校を選ぶ利点があるのかどうか、しっかり検討した上で進路選択をすることが大切です。

全日制高校をおすすめできるのは?

以上を踏まえた上で、全日制高校をおすすめできるのは以下のようなケースです。

  • 欠席日数がそれほど多くない部分的な不登校
  • 欠席日数をくつがえせる学力を持っている
  • 公立ではなく私立でも問題がない

繰り返しにはなりますが、「高校で学校に通えるのか」は未知数なので、一度チャレンジしてみる価値はあります。もし全日制高校に通えなくなったとしても、通信制高校に編入するなど他の選択肢も存在するため、失敗を恐れすぎる必要はありません。

子どもが全日制高校に通いたいと強く考えている場合は、それを実現できる環境をひとまず整えてあげることも大切ですよ。

定時制高校

続いて取りあげるのが「定時制高校」です。

定時制高校は「登校する時間」が大きく異なる点が最大の特徴で、一般的には「夜に通う」イメージだと思います。このような学校は「夜間定時制」と呼ばれ、これ以外にも朝と昼に登校する「二部定時制」や、朝から夜までの全ての時間帯で登校できる「三部制」など、実際は学校により大きく異なっています。

また、卒業までにかかる時間にも差があります。高校の卒業には「単位数(受けた授業の数)」が定められており、全日制高校は1日に6回の授業を受けるため3年間で卒業できますが、定時制の場合は1日に4時間程度の授業しか受けられないことが多く、「4年かかる」のが一般的です。

もちろん、学校によって異なる部分でもあるため、入学前に調査、相談が必要な部分だと言えます。

参考:定時制課程・通信制課程高等学校の現状 – 文部科学省

「学校に通える」点は評価できる

定時制高校を「不登校」という点で掘り下げていくと、「学校に通える」点は大きく評価できるポイントです。全日制高校ほど「悪い意味での学校感」がないため、これまで不登校だった子でも通いやすい可能性がありますし、試験や校則なども全日制高校ほど厳しくないため、自分らしさを押し殺すことなく、登校できる可能性があります。

学校に物理的に通わないとなると、「外に出なくなり引きこもりがちになる」といったリスクもあるため、「全日制高校と通信制高校の中間」のような位置付けで考えると良いかもしれません。

また、定時制高校に通う人の多くは「何らかの事情」を抱えている場合が多いため、お互いに通ずる部分が多く交流が図りやすい可能性があります。20代の通学者も少ないながらも存在するため、多様な価値観に触れられるのもまた、定時制高校の特徴です。

定時制高校をおすすめできるのは?

以上より、定時制高校をおすすめできるのは以下のようなケースです。

  • 全日制高校は難しいけど、学校には通いたい、通わせたい
  • 通信制高校だとコミュニケーション不足が心配
  • 様々な事情により1日中子どもを自宅でケアしきれない

やはり「学校に通える」点は定時制高校ならではの魅力ですよね。また、物理的に学校に通わないとなると、子どもは基本的に1日を通して自宅にいるようになります。

しかし、家庭によっては様々な事情により、1日中子どものケアをできないこともあるでしょう。定時制高校は、もともと「働きながら高校に通う子どもたち」を対象として設立されたため、夜間であっても給食が出ることが多いですし、事情を抱えた子どもたちをケアすることが好きな先生、得意な先生が在籍しています。

たとえ親子だとしても、四六時中ずっと同じ空間にいることは、時に負の影響を及ぼす可能性があるため、そういった意味でも定時制高校は検討の余地がある進路だと言えるでしょう。

通信制高校

続いて解説するのは「通信制高校」です。こちらはご存知の方も多いと思いますが「登校しない高校」のことで、不登校の子との相性は全日制高校、定時制高校よりも圧倒的に良い点が最大の特徴。

また、次に紹介する「高等学校卒業認定試験」と呼ばれる、いわゆる「高認」について、定時制高校と同じようなものだと考えている方が多いです。しかし、高認はあくまで「試験に合格することで、高校卒業程度の学力を証明する」に過ぎないため、最終学歴は中卒になります。

一方で、通信制高校はあくまで法律で定められた「高等学校」なので、必要な授業を受けて単位を取得すれば、最終学歴は「高卒」になります。この点が極めて大きな違いであり、定時制高校の魅力でもあるのです。

不登校の子の有力な選択肢になり得る

定時制高校を不登校という点で掘り下げていくと、あらゆる点で不登校との相性が良いです。代表的なものを以下に取り上げてみました。

  • 余計な人間関係が不要
  • 自分のペースで授業を受けられる、勉強を進められる
  • 多様な価値観に触れられる

言うまでもなく、通信制高校は「誰とも対面する必要がない」ため、大きなストレス要因になり得る人間関係に巻き込まれる心配がありません。自分のペースで生活し、自分のペースで勉強を進められるため、安心した環境で学校生活を送れます。

また、「多様な価値観に触れられる」点も大きいです。全日制高校の場合、「普通に生きる」子どもたちが集まっているため、必然的に「普通」に根ざした指導が行われます。

しかし、通信制高校はこのような普通に縛られることはありません。たとえば、「学校法人角川ドワンゴ学園」が運営する「N高等学校・S高等学校」は、必修科目に加え、以下のようなことを学べる環境が揃っています。

  • 大学受験対策
  • プログラミング
  • Webデザイン
  • 動画クリエイター
  • クリエイティブスキル(小説/イラスト/ゲーム/声優/メイク)
  • 企業見学
  • 語学
  • 機械学習
  • 数理科学

参考:課外授業 – N高等学校・S高等学校

プログラミングやWebデザインは、これからの時代に求められるスキルですが、全日制高校ではほとんど学ぶことができません。また、動画、小説、イラスト、ゲームなど「不登校の子が興味を持ちやすいジャンル」のことを学べるのが強み。

もちろん、何を学べるのかは通信制高校によって異なりますが、通信制高校は「全国どこからでも入学できる」ため、それぞれの子供に合った学校を選びやすいのも魅力の1つです。

通信制高校をおすすめできるのは?

以上を踏まえて、通信制高校をおすすめできるケースを以下にまとめてみました。

  • 学校に通うことに不安を抱いている
  • 身近に魅力的な学校がない
  • 「普通以外のこと」を学びたい

不登校の子は学校に通うことに不安を抱いていることがほとんどなので、通学の必要がない通信制高校は強くおすすめできます。「普通」という枠組みに縛られず、自分のペースで、自分のやりたいように学べるため、保護者目線でも安心して見守れるはずです。

一方で、高校3年間は対人関係を結ぶ上で大切な3年間であることも事実なので、通信制高校に通うことで「他者との関わり」が失われることに心配してしまう気持ちも理解できます。

このような場合は、アルバイトに挑戦させたり、通信制高校の中にもスクーリングができる学校があるため、あらゆる選択肢を模索しながら、「対面と非対面の両立」を実践できると良いでしょう。

高等学校卒業認定試験(高認)

続いて解説するのが「高等学校卒業認定試験」、いわゆる「高認」です。高認は「試験に合格することで、高卒と同程度の学力を持っている」ことを証明でき、合格者には大学、短大、専門学校への入学資格を付与しています。

そしてこれは、「学校教育法第90条」により定められている法的裏付けがあるため、高認さえ取れれば高校に通わなくても「学歴」という点ではキャリアの妨げにはなりません。高卒資格は得られないため、この点には注意してください。

また、各省庁、業界とも連携を行い、高認取得者を就職の場で高卒と同等に扱うよう働きかけが行われており、この傾向は今後も強まっていくでしょう。

例年、試験は8月と11月の上旬に行われ、試験科目は以下の通りです。

ご覧のように、国語、数学、英語、理科、社会の5つの科目が満遍なく試験科目として設定されています。受験料は「8,500円」と非常に安く、高校卒業にかかるお金を考えれば、コスパは極めて高いと言えるでしょう。

独学で学ぶのは難易度が高め

高認取得でネックになるのは「独学で達成できるのか」という点です。先述のように、試験科目は全教科で、国公立入試とほとんど同等の科目数、もしくはそれ以上を求められます。

したがって、独学で学ぶのは難易度が高く、モチベーションが続くのかも心配です。そこで選択肢にあがるのが「通信講座」ですが、通信講座を利用するためにはお金を支払わなければいけませんし、リモートや動画視聴で授業を受けることになります。

どうせ授業を受けるなら、通信制高校を利用して高卒資格を得る方が、手っ取り早く、賢い選択肢に感じる方も多いでしょう。

また、高認を取得するためにせっかく勉強をしても、合格できる保証はありません。一方で、全日制高校や通信制高校では、「授業を受けて、最低限のテスト勉強さえしていれば高卒資格を得られる」ため、高認は不登校の子にはあまりおすすめできないと言えます。

高認をおすすめできるのは?

以上を踏まえた上で、高認をおすすめできるケースをまとめてみました。

  • どんな形であれ、学校には絶対に通いたくないが大学などに進学はしたい
  • 独学でもやっていける学力、モチベーションがある
  • 無駄なことをせず最短距離で学力をつけたい

高認は学校を利用せずとも高卒と同程度の社会的身分を得られる唯一の方法なので、「絶対に学校を利用したくない」という子供、保護者におすすめです。

また、高認は16歳以上に受験資格を与えているため、18歳で高校卒業を迎える普通の高校生よりも、最短2年も早く高卒と同程度の学力を身につけられます。

とはいえ、5教科を満遍なく学ぶのは難易度が高いため、あくまで「こういう選択肢もある」程度に捉えておきましょう。

高等専修学校(専修学校高等課程)

続いては、あまり知られていない「高等専修学校」について解説していきます。

高等専修学校は「専修学校」に分類される学校のことですが、専修学校と言われてもピンとこない方も多いはずです。詳細は文部科学省の以下の引用文をご覧ください。

専修学校は、昭和51年に新しい学校制度として創設されました。学校教育法の中で専修学校は、「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図る」ことを目的とする学校であるとされ、実践的な職業教育、専門的な技術教育を行う教育機関として、多岐にわたる分野でスペシャリストを育成しています。

引用:専修学校とは – 文部科学省

簡単に言えば、「職業に直結する能力を育成する学校」、それが専修学校です。最も身近な専修学校には、高卒後の進路の1つである「専門学校」があげられます。確かに、専門学校は大学よりも仕事に直結する知識やスキルを身につけられますよね。

つまり、ここで紹介する「高等専修学校」とは、「中学卒業者が通う専門学校」のようなもので、「〇〇高等専修学校」と呼ばれる学校がこれに該当します。また、「〇〇専門学校」という学校名の場合でも、中卒者を対象にする「高等課程」を用意していることがあります。

注意すべき点は、高等専修学校はあくまで「学校」であるため、高等学校ではありません。したがって、卒業をしても「高卒資格」は得られませんが、高認と同様に高卒と同程度の学力が社会的に証明されます。

不登校特有の「将来の不安」を解消できる

高等専修学校と不登校との相性は、良い部分と悪い部分の両面がハッキリしています。

まず良い面ですが、「仕事に直結する能力」を身につけられる点は大きく評価できます。高等専修学校で行う職業教育は、以下の8つの分野に分けられます。

分野 学科
工業 情報処理、コンピュータグラフィックス、自動車整備、土木・建築 電気・電子、放送技術、無線・通信 など
農業 農業、園芸、畜産、造園、バイオテクノロジー、動物管理 など
医療 看護、歯科衛生、歯科技工、臨床検査、診療放射線、理学療法、作業療法、言語聴覚療法、はり・きゅう・あんまマッサージ指圧、柔道整復 など
衛生 栄養、調理師、製菓、製パン、理容、美容、エステ など
教育・社会福祉 保育、幼児教育、社会福祉、医療福祉、介護福祉、老人福祉、精神保健福祉 など
商業実務 経理・簿記、旅行・観光・ホテル、会計、経営、医療秘書、流通ビジネス OA、ビジネス、福祉ビジネス など
服飾・家政 ファッションデザイン、ファッションビジネス、アパレルマーチャンダイジング、和洋裁、編物・手芸、スタイリスト など
文化・教養 デザイン、インテリアデザイン、音楽、外国語、演劇・映画、写真、通訳・ガイド、公務員、社会体育 など

参考:高等専修学校とは? – 全国高等専修学校協会

これらの分野の専門的なスキルを「高校生の年代」から、周りに先んじて身につけられるのは、今後のキャリアに大きく貢献してくれるはずです。

不登校の子、及びその保護者は「将来への不安」を抱えていることが多いため、これをケアできるのは他の進路にはない強みだと言えます。

一方で、相性が悪い部分には「継続して登校できるかどうか」があげられるでしょう。高等専修学校は高校ではないとは言え、登校は必ず必要です。ここに不登校の子が馴染めるのかどうか、不安になってしまうのも無理はありません。

しかし、高等専修学校は「不登校生に寛容」であることが多いため、少なくとも全日制高校に通うよりはサポートが期待できます。

高等専修学校をおすすめできるのは?

以上を踏まえた上で、高等専修学校をおすすめできるのは以下のようなケースです。

  • 勉強よりも仕事に直結するスキルを身につけたい
  • 特定の分野に強い興味を持ち、その仕事につきたいと思っている
  • 身近に高等専修学校がある

今も昔も、「手に職をつける」ことは極めて大切なことです。不登校の子の場合、高校に普通に通えたとしても、その先の進路がどのようになるのか未知数な部分が大きいため、なおさらそうだと言えます。

したがって、周りの子どもたちが高校生として普通の3年間を過ごしている時間で、「仕事に直結するスキル」を磨けるのは極めて意義のあることであり、大きな財産になる可能性を秘めているでしょう。

一方で、高等専修学校は圧倒的に数が少なく、「各都道府県に数個程度」しかありません。その上、各学校が特定の分野に特化しているため、高等専修学校が身近にあったとしても、希望する分野の学校であるとは限らないのです。

ゆえに、「どこに住んでいるか」で選択肢が極端に変わってくるため、全ての人におすすめできる選択肢ではありません。

高等専修学校に興味がある方は、一度身近な高等専修学校について調べてみると良いでしょう。全国高等専修学校協会の会員校名簿が参考になります。

就職

最後に解説するのが「就職」という選択肢です。

こちらは細かい説明は不要だと思いますが、「できれば就職はして欲しくない」と考える方が大多数ではないでしょうか?

確かに、中卒で就職となると、就ける職業が極めて大きく制限されます。「学歴不問」とする職業にしか就けず、雇用形態も正社員は難しいため、「可能なら進学した方が良い」という考え方が普通です。

本人の選択を最大限尊重してあげよう

このように、大人の目線に立つと「進学した方が良いに決まっている」と考えるものですが、不登校の子の目線に立つと「学校と名前につくものが嫌で嫌で仕方ない」と、就職を自ら望んでいる場合もあるかもしれません。

そういった場合、保護者の対応は極めて難しいです。「中卒でもこんなに稼いでいる」といったエピソードが定期的に社会の中で取り上げられますが、これはあくまでほんの一握りであり、実際はキャリアに大きく制限がかかり、生きていくことに対して不自由を感じている方も少なくないはずです。

だからこそ、学歴やスキルを身につけるために、「進学という選択肢を選んで欲しい」と考えるのが普通ではあるものの、「学校に通いたくない」という気持ちも十分理解できます。

したがって、子どもには「ありのままの事実」を伝えてあげてください。「それぞれの進路の利点と欠点」を事実として伝え、「納得した上で進路を選択させる」ことが何よりも大切です。

その上で、「それでも自分は就職したい(学校に行きたくない)」と言うなら、それはそれで仕方のないこと。もし就職が失敗に終わった場合でも、進学というキャリアに戻ることは可能です。

多様な進路の中から最適なものを選ぼう

中学生の進路は人生を大きく左右する非常に重要なものなので、不登校の子の進路に悩むことは至って自然なことです。

大切なのは、普通を追い求めることではなく、その子に合った進路に「これが自分の人生だ」と自信を持って歩みを進めていくことです。このような選択ができるよう、周囲の大人は全力でサポートをしてあげましょう。