「同じ歩調でなくていい」不登校 3年伴走の現場から|たたみ先生インタビュー
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「進路の選択肢」「生活リズムの立て直し方」「出席扱いになるオンライン学習」——書店にもネットにも、不登校に関する情報はあふれています。それでも保護者の方々が一番知りたいのは、「実際に何年もかけて、ひとりの子どもに伴走した先生の語り」ではないでしょうか。
今回お話を伺うのは、滋賀県で家塾を営みながら、通信制高校で英語と国語を担当されているたたみ先生です。30年以上の社会人経験を経て41歳で大学に入り直し、教員免許とキャリアコンサルタント国家資格を取得。発達特性のある男子高校生を8年間にわたって伴走し、大手企業就職まで見届けた経歴を持ちます。
そんなたたみ先生が月刊誌『生命の教育』(平成30年10月号)に寄稿された、3年以上をかけてひとりの生徒を支え続けた体験には、こんな一節があります。
人には、その人に応じた成長の歩みがある。みんなとスタートでなくたって、同じ歩調でなくたって、遠くへ道草くったって、ちゃんと昨日と違う今日を生きて、その人なりの成長をしている。
— たたみ先生 寄稿文「不登校サポート体験談」より(『生命の教育』平成30年10月号 転載許諾済)
本記事では、たたみ先生の寄稿文を主軸にしつつ、まなぶてらす編集部によるインタビューを通して、不登校期の子どもとどう向き合い、保護者は何を握っておくべきかを6つの問いから掘り下げていきます。
不登校の子の保護者に持ってほしい3つの前提【マインド編】
まず最初に、たたみ先生に「不登校・行き渋りのお子さんを持つ保護者に、一番大切にしてほしい心構えを3つ挙げてください」とお聞きしました。
たたみ先生
① お子さんが元気で楽しく暮らせているかに目を向ける
② お子さんの前で不安な気持ちを見せない(不登校は問題でも困ったことでもない)
③ 不登校の原因を追究しない(ほとんどのお子さんは理由を言語化できない)
シンプルな3点ですが、どれも「やってしまいがち」なことの真逆です。
たたみ先生いわく、「通塾されるご家庭の多くは教育熱心で、どうしてもお子さんの成績に目が向きがちになります。◎や△、数字で現在地が見えて、賞罰の根拠にもなりますからね」。そういうご家庭に対して、たたみ先生はこんな声かけをするそうです。
「でも、成長されましたよね。生まれたときはご自分で箸も持てなかったのに、トイレにも行けなかったのに、今は立派に全部ご自分でされるじゃないですか」——すると保護者の方は「確かに!」と笑い飛ばしてくれるといいます。
たたみ先生の塾からも、かつて不登校となり退塾されたお子さんが3名いました。そのお母様たちが今も時々たたみ先生の塾に集まって「お茶会」を開かれるそうです。そのとき、お三方が異口同音に語るのがこの言葉だといいます。
元気で笑顔でいてくれることが一番だったんだよね。
— たたみ先生インタビューより
「家族だけで抱え込まないこと」も、たたみ先生が繰り返し強調されていた視点です。農業体験塾やドラム教室に通ったお子さん、教育相談支援員の方の働きかけで4年ぶりに外出した青年——結果的には、第三者の関わりがあって皆さん動き出されたというのです。
そして、ご自身のお話も明かしてくれました。実はたたみ先生ご自身のお嬢さんも、小学校のころに不登校を経験されたそうです。ご家庭では「晩ごはんは皆で一緒に」という習慣があって、食事中の子どもの表情やしぐさで変化がわかる。だからお嬢さんが「学校へ行きたくない」と言い出したとき、「来たか、と自然に受け入れられた」と言います。子どもの笑顔が消えていく場所へ行かせたくない——その思いが、保護者としての立場を支えてくれたそうです。
その後、お嬢さんは紆余曲折を経て高校中退・就職・20歳で夜間高校入学、今は看護師として働いているそうです。「人生は長いです。何度でもやり直せます」——インタビュー越しにも、その言葉の重みが伝わってきました。
3年以上、ひとりの生徒を伴走して見えたこと
41歳で大学に入り直した理由
たたみ先生が通信制高校の講師として「粘り強く、何度でも訪問し続ける」というスタンスにたどり着いたのは、40歳を過ぎてから踏み出した学び直しの体験が出発点でした。
30年以上の社会人経験を経て、たたみ先生は41歳で大学に進学されました。そこで出会った教育学の言葉が、今のすべての基になっているとおっしゃっていました。
人はそれぞれかけがえのない存在であり、だれでもが可能性を秘めている。教育とは、その可能性を「引き出すこと」で、「愛情と忍耐をもって人と関わっていくこと」。
— たたみ先生が大学で出会った教育学の言葉
「さらにそれを体現するかのような、温かく慈愛に満ちた先生方の存在が、影響として大きかった」とたたみ先生は話します。夜間高校の先生方がご自身のお嬢さんに同じように接してくださったこともあって、その言葉はいっそう深く刻まれたのだそうです。
「夜間中・高校にも通信制高校にも、様々なバックグラウンドの生徒さんがいます。彼らを見ていて、人生は学校だけで決まるものではないことを確信しました」。そして付け加えてくださいました——「学校へ行きたくなったとき=学びの絶好機。年齢など関係ありません。60歳すぎて3度目の大学で学んだときに、この学びは今の年齢だからこそ身に染みる、と思ったものです」。
自分自身が何度も「学び直した」人生を歩んできたからこそ、不登校で動けない子どもたちへのまなざしは、急かさない。待つ。ただそこにいる——そんな温度を帯びているのかもしれません。
中学2年でお父様を亡くした、ある男子生徒のこと
ここから先は、たたみ先生が月刊誌『生命の教育』(平成30年10月号)に寄稿された3年以上にわたるひとりの生徒との伴走の記録をベースに、当時の現場をお伝えします。生徒のプライバシーに配慮し、個人が特定されないように地域や学校名は伏せ、「Aさん」と表記してまとめさせていただきます。
たたみ先生がAさんと出会ったのは、Aさんが通信制高校に入学した時期でした。Aさんは中学2年でお父様を亡くされたことをきっかけに不登校となり、その後は長く家から出られない状態が続いていたといいます。
中学卒業と同時にたたみ先生の勤務する通信制高校に入学したものの、入学後の1年間は課題レポートはまったく手につかず、スクーリングにも出席できず、単位はひとつも取得できませんでした。続く1年間は休学。入学から2年間、Aさんが学校とつながれた時間はほぼゼロだったということになります。
冒頭でお伝えしたとおり、不登校の子どものうち54.2%が90日以上欠席している長期欠席状態にあります(※1)。Aさんのように学校と数年単位で離れた状態が続くケースは、決して特異な例ではありません。
地元の教育委員会や不登校支援団体などが支援チームをつくり、月に一度の会議で対応策を協議していました。たたみ先生の前任者も会議に参加していましたが、Aさんが社会と接点を持つまでの道のりは遅々として進まなかったといいます。
「カーテン越しの会話」から始まった家庭訪問
たたみ先生が引き継いでからも、最初の家庭訪問は自室のベッドのカーテン越しに、こちらから一方的に話しかけるだけでした。Aさんは声を発することもなく、顔を見せてもくれません。お母様も説得しきれず、徐々にあきらめの様相を呈してこられました。
当初、家庭訪問しても自室のベッドのカーテン越しにこちらから話しかけるだけで、声を発するどころか顔を見せてもくれませんでした。お母様も説得しきれず、徐々にあきらめの様相を呈してこられました。
— たたみ先生 寄稿文「不登校サポート体験談」より(『生命の教育』平成30年10月号)
不登校の長期化に向き合ったご経験のある保護者の方なら、この「あきらめの様相」という言葉に思い当たる節があるのではないでしょうか。何年も同じ状態が続くと、ご家庭の中の希望のろうそくは、確かに少しずつ細くなっていきます。
それでもたたみ先生は、返事がなくても課題レポートを置いてくる、次に行くときにまた少しだけ話しかける——その繰り返しを続けられました。すぐに結果を求めない、変化を急がない、それでも訪問を絶やさない。Aさんが社会と接点を持ち直すきっかけは、この長期にわたる「定点」の存在からしか生まれなかったのではないかと思わされます。
復学2年後、リビングに顔を見せた日
Aさんに変化が見え始めたのは、入学後3年目に復学を果たしてからのことでした。同級生たちが卒業を迎える時期になって、Aさんは少しずつレポート課題に取り組み始めました。たたみ先生が訪問すると、リビングに顔を見せてくれるようになり、少しだけ会話もできるようになりました。別れ際には「今日はありがとうございました」ときちんと挨拶もしてくれたといいます。
「他人であるたたみ先生に、躊躇なく会ってくれた」——この事実こそが、Aさんが社会と再びつながり始めた最初の合図でした。
ここでたたみ先生が選ばれた次の一手が秀逸です。「これは良い傾向。他の教師たちにも会ってもらおう」と判断し、訪問の度に他の教師を1人ずつ同伴するようにされました。「誰も君を傷つけないし、むしろ味方だと気づいてもらおう」——これはAさんに直接語りかけた言葉ではなく、たたみ先生が「Aさんに気づいてもらうため」に戦略として描かれた絵だったのです。
家族と教師の二者関係に閉じこもりがちな不登校期において、「安全な大人」のネットワークを少しずつ広げていく——この発想は、保護者の方にとっても応用可能なヒントを含んでいます。
関連して、ご家庭の外に少しずつ「安全な大人」とのつながりを広げていく方法は、こちらの記事でも詳しく整理しています。
5年ぶりの外出——植物園・博物館見学に参加した夏の朝
そして、ある日の早朝、たたみ先生の携帯電話が鳴りました。Aさんのお母様からでした。
本日、特別活動参加のため、兄の車で家を出ました。何年ぶりかの外出で心配ではありますが、本日はよろしくお願いいたします。
— たたみ先生 寄稿文「不登校サポート体験談」より(Aさんエピソード本文)
その日は1学期の最終日であり、年間12時間の参加が必須となる特別活動として、出席日数の不足している生徒たちのために開催された植物園・博物館見学の日でした。
ほんの1ヶ月前の家庭訪問では、「Aさん、少しだけ車でドライブしてみない?」と声をかけても首を振るばかり。それでも特別活動の案内文を手渡しておく。返事は期待しない。でも、選択肢を渡し続けることはやめない。この姿勢が、Aさんにとって5年ぶりの外出という、人生の節目になりました。
「暑いなかよく来てくれたね。ありがとね」——たたみ先生の口から、思わずそんな言葉が出たそうです。
寄稿文に込められたメッセージ
たたみ先生は寄稿文の最後を、こう締めくくっています。
同級生たちとは時期は違ったけれど、土のなかで自分が芽を出すタイミングを見計らっていたのかな、と思いました。
人には、その人に応じた成長の歩みがある。みんなとスタートでなくたって、同じ歩調でなくたって、遠くへ道草くったって、ちゃんと昨日と違う今日を生きて、その人なりの成長をしている、そう思えた瞬間でした。
— たたみ先生 寄稿文「不登校サポート体験談」より(『生命の教育』平成30年10月号 転載許諾済)
中学2年でお父様を亡くしてから、Aさんが再び外の世界と接点を持つまでに約5年。学校という単位で見れば「3年遅れ」と表現されてしまうかもしれません。けれども、たたみ先生の言葉を借りるなら、Aさんはその5年のあいだ、ちゃんと昨日と違う今日を生きていたのです。
学校カリキュラムを追いかけない、たたみ先生の学び直しの関わり方
「学校カリキュラムを追いかけて、今の学年の内容を必死に詰め込まなければ」——不登校期の保護者が陥りやすいこの焦りを、たたみ先生は一度立ち止まって考え直してほしいと言います。
「学校のカリキュラムは、すべての生徒が質の高い平等な学習機会を得られるために必要な授業計画です。ですが、不登校の生徒さんだけでなく、例えば中学2年生で1年の英語があまり理解できていない生徒さんにも、まったく意味をなしません」
同じスタートで、同じ内容を、同じペースで習得させようとすること自体に無理がある。そこから出発するのが、たたみ先生の指導哲学です。
たたみ先生
「できない」ことばかりに目を向けず、子どもたちの”今”に視点をおき、何で困っているのか、何に不安を感じているのかに耳を傾けることが必要だと思います。
具体的には、たとえ中学3年生でも、理解が詰まっていると感じたら1年生の内容まで遡って、ひとつひとつ丁寧に「困りごとを取り除いていく」とおっしゃいます。
すると何が起きるか。「”分かった”が増えるごとに自信を取り戻し、好きなこと・関心のある方向へも眼差しを向けることができるようになります。そうなるとお子さんは、目を見張るほどの成長を見せてくれます」。
大切にしてほしい視点は、成長の方向は一本道ではないということ。国語が好きなら音読と対話から、英語に入るなら文法の前に「伝えたい気持ち」から——そのお子さんが動き出せる入口を探すことが、先生の仕事だとたたみ先生は言います。
「お子さんの内にある成長の芽を信じて気長に待つこと、これに尽きると思います」——学校の進度に追いつかせなきゃという焦りがそのままお子さんに届いてしまうことが、一番の問題なのかもしれません。
勉強を再開するきっかけの作り方や、無理なく学びに戻る手順についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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良かれと思って親がやりがちなNGな関わり方【現場事例3選】
長年の指導現場で出会ってきた保護者の方々の中で、「本当に心配だからこそ、やってしまう」けれど結果的にお子さんとの溝を深めてしまった——そんな関わり方を、たたみ先生に具体的に語っていただきました。
NG① 不安を行動でぶつける——N君の場合
高校1年の3学期、登校が困難になったN君。お母様はお子さんの将来を案じるあまり、今後の進路選択フローチャートまで作って記入させようとしました。好きだった歴史の本を買い与えることもしました。
「それまで何度か居間に顔を見せていた彼は、二度と家族がいる場所に顔を出さなくなりました」とたたみ先生は言います。「お母様の強い不安が彼に伝わり、彼は自分が問題事そのものと感じてしまったのでしょう。」
✕ やってしまいがち:進路フローチャートを作って記入させる / 次々と本や教材を買い与える
◎ 代わりに:「今日何食べたい?」——目先の安心を積み重ねる / 何もしない日があっていいと言葉で伝える
NG② 「環境が変わればきっと」という期待——F君の場合
成績はトップクラス、サッカー部のキャプテンも務めていたF君は、中学2年の2学期に突然登校を拒否するようになりました。3年になっても状況は変わらず、ご両親から勧められてある高校を受験し、合格しました。
「周囲の大人は、環境が変わればきっと彼の気持ちも変わると期待したのです。ところが入学後2か月ほどで再び不登校に。そして家庭内で荒れるようになりました」とたたみ先生は振り返ります。「彼の気持ちの安定よりも、学校に戻すことを優先してしまった結果かと思います」。
✕ やってしまいがち:「環境が変われば大丈夫」と進路で解決しようとする / 好転の兆しに過剰な期待をかける
◎ 代わりに:まず気持ちが落ち着く時間を十分に取る / 「よかった」で終わらせず、静かに見守る
NG③ 「腫れ物にさわる」対応——Mさんの場合
県内でもトップクラスの進学校に在籍していた高校1年のMさん。お父様は単身赴任でお母様が一人で対応されていましたが、Mさんに対して腫れ物にさわるような対応を続けていたそうです。
3年生になって卒業に単位不足の教科が出てきたとき、登校を促すとお母様に暴力を振るうようになりました。最終的に、たたみ先生が同伴する形でなんとか卒業まで乗り切りました。
「彼女の内には、不登校を恥ずべきもの、その渦中にいる情けない自分への怒りがあったように見えました。保護者の方の当初の対応が適切でなかったことが影響していると思います」とたたみ先生は語ります。
✕ やってしまいがち:腫れ物にさわるように過剰に気を遣う / 本人が恥じていることを気づかないまま放置する
◎ 代わりに:「不登校は悪いことじゃない」と明確に伝える / 第三者を早めに介入させる
3つのケースに共通しているのは、保護者が「何かをしなければ」という焦りを行動に出してしまうことです。その不安がそのままお子さんに届いてしまうのが、最も避けたい状況なのかもしれません。
生活リズムの整え方や段階的な立て直し方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
続けられるリズム作りと、保護者ができるちょうどいい距離感
「不登校だからといって、一日ぼーっと過ごしていてもよいということではないのです」とたたみ先生は前置きしつつ、こう続けます。「決まった時間に起きる、朝食を食べる、適度な運動をする——そういった生活リズムを整えることが、まず大切です」。
そのうえで、腫れ物にさわるような対応をしないことも同じくらい重要だとおっしゃいます。「決して悪いことをしている訳ではないので、ご家庭では堂々と生活を楽しむべきでしょう」。
たたみ先生
不登校のお子さんのいるご家庭で、大人が無理に笑顔を作ったり、逆に重苦しい雰囲気になってしまったりするのが一番よくありません。食事・お風呂・おやすみ——その繰り返しの中に、安心の土台があるんです。
たたみ先生が中学2年のSさんのご家庭に週3回訪問していたときのことを、話してくれました。ご両親は共働きで、一人っ子だったSさんは訪問を楽しみに待っていてくれたそうです。授業(数学・英語)と週2冊の読書感想文指導に加えて、Sさんには掃除・洗濯・料理の下ごしらえといった日々の「仕事」も割り当てられていました。
「不登校のお子さんの多くが第三者と顔を合わせるとき、下を向いたり顔を背けたりされるのですが、彼女はいつも屈託のない笑顔だったのが印象的でした」とたたみ先生。
ご両親のスタンスも、参考になります。「勉強のことはプロにお任せします——と、学習内容もカリキュラムも私に全部任せてくださいました」。月1〜2回は教育相談支援員の方も訪問し、外出の機会も作っていたそうです。
保護者が「ちょうどいい距離感」を保つためのポイントを、たたみ先生がまとめてくれました。
- 生活の基本ルーティンは保護者が維持する(起床・食事・睡眠)
- 学習や外出の支援は第三者に任せる(家庭教師・支援員・フリースクール)
- 「今日どうだった?」と聞かない——食卓の雰囲気で十分
「やはり第三者との連携は不可欠だと感じたケースです」——この言葉は、Sさんのエピソードだけでなく、これまでたたみ先生が向き合ってきたすべての子どもたちへの思いを凝縮しているように聞こえました。
不登校支援に関するよくある質問
Q. 不登校期に「出席扱い」になるオンライン学習はありますか?
はい、2019年(令和元年)10月25日付の文部科学省通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」(元文科初第698号)に基づき、自宅でのICT学習を学校の出席扱いとできる制度があります(※3)。主な要件は「保護者と学校の十分な連携」「定期的な対面指導」「計画的な学習プログラム」などです。実際の運用は学校・自治体ごとに判断が分かれますので、制度の詳細・申請手順はこちらの記事で詳しく整理しています。
Q. オンライン家庭教師は不登校のお子さんに向いていますか?
お子さんによって相性はありますが、「自宅から、短い時間から、慣れた1人の先生と」始められる点で、対面の塾より心理的ハードルが低いというお声を多くいただきます。カメラオフでの受講や、まずは雑談から始める設定など、柔軟に組み立てられるのもオンラインの強みです。講師選びの具体的な観点はこちら。
Q. 通信制高校とサポート校は何が違いますか?
通信制高校は学校教育法に基づく正規の高校で、卒業すれば高校卒業資格が得られます。サポート校は通信制高校に籍を置く生徒の学習・生活を支援する民間の施設で、サポート校単独では卒業資格にはつながりません。通信制高校を選ぶ生徒は10年で60.8%増加し、令和6年度は約29万人に達しています(※2)。「サポート校とのダブル在籍で学費が二重にかかる」という落とし穴もあるため、進路の比較表と家族会議の進め方はこちらを参考にしてください。
Q. 学校の先生やスクールカウンセラーとの連携はどう進めればいいですか?
たたみ先生の寄稿文にもあったように、不登校支援は「家族だけで抱え込まない」ことが何より大切です。多くの自治体では、教育委員会・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー・不登校支援団体などが連携できる体制を整えています。第一歩としては、担任の先生に「家庭・学校・支援機関の3者で月1回ほど情報共有の場を持てないか」と相談するのが入りやすい入口です。
Q. 学校に毎日通えなくても、子どもの将来のキャリアは大丈夫でしょうか?
キャリアコンサルタントの国家資格を持つたたみ先生に、保護者が一番抱えるこの不安を正面から聞いてみました。たたみ先生が語ってくれたのは、発達特性を持つB君との8年間の伴走の記録です。
たたみ先生がB君と出会ったのは、B君が高校2年生のとき。当初ご両親からは「本人の希望はともかく、行ける大学や企業への道筋をつけてほしい」という相談でした。ところがB君は「理系の大学に進みたい」という強い希望を持っていました。そこで、一番苦手だった英語をサポートすることから始め、B君は第一志望の理系大学(ロボット工学専攻)に合格しました。
通常であればここで教師の仕事は終わりますが、大学での自律的な学びに不安があったB君は、ご本人もご両親も「このまま続けてほしい」と希望されました。たたみ先生は英語サポートに加え、キャリア教育やビジネス講座的な内容まで担うことになりました。
大学院での研究発表サポート、インターンシップの申請支援、そして就活。B君は障碍者手帳を持っていたため、企業の採用担当者への問い合わせはたたみ先生が担当しました。それでもB君の意志は揺るぎませんでした。「大手企業でないと行かない。障碍者枠では給料が安いので嫌だ」——一点張りです。
そこから彼と私の就活二人三脚が始まりました。エントリーシートやプレゼン資料の作成にSPI対策、面接対策など。もちろん何社も落ちましたし、その度にESも内容を変え、何枚書いたことか。当時の彼の就活に対する執念のようなものには、私の方が圧倒され音をあげそうでした。
— たたみ先生インタビューより
最終的にB君は大手企業への就職を決めてきました。それから15年が経ちました。今もB君からは毎年年賀状が届き、勤務は続いているとのことです。「あきらめなければ道は開ける——というケースでした」とたたみ先生は静かに話してくれました。
まとめ:気長に信じて、家族だけで抱え込まないために
今回のインタビューを通じて、たたみ先生が一貫して伝えてくださったことは、シンプルにまとめると2つです。
- お子さんの「元気・笑顔」を何より優先する — 学習の成果よりも、日々の暮らしの安心が土台。成績より「今日も笑顔だったか」に目を向ける
- 不登校の原因を追究しない — ほとんどのお子さんは理由を言語化できない。「なぜ行けないの?」より「今、何が楽しい?」
- 学校の進度を追いかけない — 中学3年生でも1年の内容まで遡ってOK。「今その子が立っている地点」からスタートする
- 結果を急がず、定点として関わり続ける — 返事がなくても訪問を続けた積み重ねが、Aさんの5年ぶりの外出につながった
- 第三者と積極的に連携する — 家庭教師・支援員・支援団体など、「安全な大人」のネットワークを少しずつ広げる。家族だけで抱え込まない
元気で笑顔でいてくれることが一番。そして家族だけで抱え込まないこと。
Aさんが5年ぶりに外を歩いた日も、B君が大手企業の内定を取った日も、Sさんが屈託のない笑顔で先生の訪問を待っていた日も——そのどれも、「すぐに学校に戻ること」を目標にしていたわけではありませんでした。
ただそこにいる。また来る。選択肢を渡し続ける。そして第三者の力を信じて任せてみる。それを何年も続けた先に、その子なりの「芽吹き」があった。
人には、その人に応じた成長の歩みがある。みんなとスタートでなくたって、同じ歩調でなくたって、遠くへ道草くったって、ちゃんと昨日と違う今日を生きて、その人なりの成長をしている。
— たたみ先生 寄稿文「不登校サポート体験談」より(『生命の教育』平成30年10月号)
長期戦になればなるほど、保護者の方は孤立しがちです。焦る気持ちを抱えながら、それでも「不安を見せてはいけない」と自分に言い聞かせながら、毎日を過ごされている方も多いのではないでしょうか。
そんなとき、外部の「第三者」がひとりいるだけで、家庭の空気はずいぶん変わります。まなぶてらすには、たたみ先生のように不登校支援の経験を持つ先生が多数在籍しています。まずは無料体験から、お子さんのペースに合った伴走者を探してみてください。
気長に、でも一人で抱え込まないために。
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参考文献
※1 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(令和7年10月29日通知 / 令和8年1月16日詳細版)— 中学校不登校 216,266人、小中合計 353,970人、90日以上欠席 191,958人(54.2%)
※2 文部科学省「学校基本調査 令和6年度」— 通信制高校生徒数 290,087人(10年で +60.8%)
※3 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日 元文科初第698号
寄稿元: たたみ先生「不登校サポート体験談」『生命の教育』平成30年10月号(発行元より転載許諾済)
この記事の著者
まなぶてらす編集部
「まなぶてらす」は、勉強も習い事もひとつの場所で学べるオンライン家庭教師サービスです。一人ひとりの「好き」や「得意」を伸ばし、お子さまの強みを育てることを大切にしています。学びに関する最新情報や、家庭学習に役立つ知識をお届けします。
この記事の取材協力
たたみ 先生
通信制高校講師・キャリアコンサルタント(国家資格)
30年以上の社会人経験を経て41歳で大学に入り直し、教員免許を取得。滋賀県で家塾を経営しながら通信制高校で英語・国語を担当。不登校・引きこもりの生徒への長期伴走から、発達特性のある生徒の大学進学・就労支援まで手がける。