「発達障害のわが子に、中学受験は難しいでしょうか」——そういう問いを持つ保護者の方に、まず伝えたいことがあります。受験は「しなくていい選択肢」でもあります。環境を変える手段として受験を選ぶことも、公立中学に進んで別のかたちで育てていくことも、どちらも正解です。

発達障害(神経発達症)の子どもが中学受験に臨むケースは少なくありません。特性に配慮した環境を求めて私立中学を選ぶ家庭、感覚に合った少人数制の学校を見つけた家庭など、受験が「逃げ」ではなく「前向きな選択」になる事例もあります。

この記事では、特性を踏まえた戦略設計の考え方と、オンライン個別指導をどう活用するかを整理します。

Contents

発達障害の子の中学受験、まず整理したい3つのこと

①受験の目的を家族で共有する——「逃げ」にも「挑戦」にもなる

「なぜ中学受験をするのか」を、家族で言語化しておくことが出発点です。特定の環境(少人数、個性を尊重する校風、発達支援の体制がある)を求めて私立を選ぶという目的は明確で説明しやすい。一方、「今の学校が辛いから逃げたい」という動機も、否定する必要はありません。

大切なのは、子ども本人が「受験したい」と思えているかどうかです。保護者の意向だけで走り出すと、受験準備の過程で子どもが消耗しやすくなる傾向があります。子どもの言葉で「どんな中学に行きたいか」「なぜ受けたいか」を確認する機会を持ってみてください。

②子どもの負担ラインを見極める——特性ごとの疲れやすさ

発達特性のある子どもは、学習そのものとは別のところでエネルギーを使いがちです。たとえば、ASDの特性がある子どもは予期しない変化や感覚刺激に強いストレスを感じる傾向があります。ADHDの特性がある子どもは、不注意や衝動性から同じミスが繰り返されやすく、自信を失いやすい面があります。ただし、お子さんによって特性の現れ方は大きく異なります。

受験準備を始める前に、「今の生活で消耗していないか」を確認することが先決です。体調の波が大きい時期や、学校でのトラブルが重なっている時期に受験準備を上乗せすると、両方が崩れやすくなります。

③専門家・学校との情報共有を早めに始める

スクールカウンセラーや主治医など、お子さんを支えている専門家と「受験を考えている」という共有を早めにしておくことが有効です。特性を踏まえた受験方法(試験時間の延長・別室受験など)は、学校ごとに対応が異なります。受験する場合は、志望校の入試相談窓口に配慮の可否を早めに問い合わせてみてください。

志望校選びの考え方——特性を踏まえた「現実ライン」の設定

内申不要・面接重視・少人数制など、特性に合う学校の探し方

特性のある子に合う学校を探す際は、偏差値より先に「環境」の条件を整理することから始めるのが有効です。例えば以下のような視点で候補を絞ることができます。

特性に配慮した学校選びのチェックポイント例
・クラス人数が少ない(30人以下)か
・発達支援や相談室が充実しているか
・試験での配慮(時間延長・別室等)に対応しているか
・内申点重視か、一発試験か
・校風が「個性を認める」方向にあるか(学校説明会で直接確認)
・通学時間・ルートが子どもの体力に合っているか

偏差値だけでなく「6年間通える環境か」を見る視点

中学受験での合否は入口にすぎません。合格後の6年間を無理なく過ごせるかどうかが、長い目で見た選校の本質です。偏差値の高い学校に入っても、授業スピードや環境が特性と合わなければ、毎日が消耗する場になります。学校説明会や個別相談、体験入学などを積極的に活用して「空気感」を確認してみてください。

模試・過去問への取り組み方——数字に振り回されない使い方

模試の偏差値は、あくまで「今の学力の目安」です。特性のある子どもの場合、当日のコンディション(体調・感覚刺激・気持ちの波)によって結果が大きく変わる傾向があります。一回の結果だけで「向いていない」「無理だ」と判断しないことが大切です。

過去問への取り組みは、時間を計ってやる前に「慣れること」を優先する段階を設けると、プレッシャーを和らげやすくなります。

塾+オンライン個別指導の組み合わせパターン

パターンA:塾メインで苦手科目だけオンラインで補う

集団の塾でペースは保ちつつ、特定の苦手科目(国語の記述・算数の文章題など)だけをオンライン1対1で丁寧に補うパターンです。塾の授業内容をオンライン講師に共有しながら進められるため、学習のつながりを維持しやすいのがメリットです。

パターンB:塾を使わずオンライン中心で進める

集団塾の環境(大人数・大きな音・柔軟性のないスケジュール)が特性に合わない場合は、最初からオンライン中心で受験準備を進める選択肢もあります。すべてをオンラインで設計するには、講師との連携と保護者の進捗確認が必要になりますが、子どもの負担を最小化できるメリットがあります。

パターンC:直前期だけオンラインを追加する

塾で通常の学習を進め、本番3〜6ヶ月前からオンラインを追加して過去問対策や弱点補強に集中するパターンです。負担を分散させながら、ラストスパートでピンポイントに強化できます。直前期は体調の波も大きくなりやすいため、予約変更のしやすいオンラインサービスとの相性が良い時期です。

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「不調の日」を想定した学習設計——柔軟な予約の使い方

当日キャンセル・振替ができるサービスの重要性

発達特性のある子どもは、体調や感情の波が学習に影響しやすい傾向があります。「今日は無理」という日に無理やりレッスンを進めても、学習が定着しにくく、むしろ疲弊だけが残ることがあります。

オンラインサービスを選ぶ際は、前日・当日のキャンセル・振替がしやすい仕組みかどうかを事前に確認しておきたいポイントです。まなぶてらすでは講師との調整で柔軟な予約変更ができるため、体調の波に合わせたペースで学習を継続しやすい設計になっています。

週の波に合わせて予約を動かす実例

活用例:週5コマを固定せず「良い日」に集中させる
・月曜:調子を見て決める(月1回キャンセルを想定して枠を確保しておく)
・水曜:比較的安定している曜日に苦手科目を配置
・金曜:週の疲れが出やすいため、得意科目や復習メインの軽い内容
・土曜:まとまった時間が取りやすい場合、過去問演習

「休んでもリカバリーできる」安心感が継続の鍵

受験期に最も崩れやすいのは、「休んだ分を取り戻さなければ」というプレッシャーです。「休んでもリカバリーできる設計」があることが、長期的な継続につながります。週ごとの進捗より、月単位で「こなせている実感」が積み重なる設計にしてみてください。

講師に「受験と特性の両方」を共有するコツ

事前に伝えるべき情報:困りごと・強み・学校の配慮内容

初めての講師に特性を伝えることに、ためらいを感じる保護者の方もいます。ただ、伝えることで講師側が適切な言葉かけ・ペース・課題設定ができるようになります。診断名よりも、具体的な「困りごと」と「強み」を伝える方が実践的です。

講師に伝えると良い情報の例

困りごとの例:「長い文章を読むのが苦手」「声で指示されると忘れやすい」「急な変更があるとパニックになりやすい」
強みの例:「図や絵で理解するのが得意」「好きなことは驚くほど集中できる」「一度覚えたことは忘れない」
学校での配慮:「別室での試験を受けたことがある」「提出物の締め切りを個別に設定してもらっている」

体験レッスンで見るべきポイント

体験レッスンは、お子さんの反応を観察する機会です。評価の視点よりも「安心して話せていたか」「次もやってみたいという様子があったか」を確認することを優先してください。緊張している初回では実力は出にくいため、「怖くなかった」という印象が残れば十分なスタートです。

発達障害のお子さまの受験をサポートする講師たち


くろまる先生

くろまる 先生

中学受験実績豊富(渋谷幕張・栄東・市川等)、発達障害サポート対応。指導歴10年以上。独自の「くろまる式キーワード学習法」で偏差値向上を実現。不登校・グレーゾーンの生徒へのサポート経験も豊富で、子どもの可能性を信じ切る姿勢に定評があります。

口コミ:「到底無理と思える志望校を一切否定せず、可能性にコミットし誰よりもその可能性を信じ伸ばそうとしてくれる先生です」

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あかり先生

あかり 先生

指導歴25年・2,000人以上の実績を持つ中学受験国語の専門家。記述問題と作文指導に特に強く、灘・早稲田・慶応附属など難関校への合格実績も豊富。「わかる」から「解ける」への段階的指導で、苦手な子の国語偏差値を大幅に伸ばした実績があります。

口コミ:「国語の偏差値が20上がり、ずっとD判定だった憧れの高校に合格できました!本番では国語が一番良い点数でした」

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えみお先生

えみお 先生

指導歴20年以上・算数・数学・理科に定評。不登校・ホームスクーリングのサポート経験が豊富で、子どもが「自分で考える力」を育てることを重視した指導スタイル。私立中学受験から大学受験まで幅広く対応しています。

口コミ:「娘が『勉強したい』と自分から言い始めました。学ぶことの楽しさを教えてくださった先生です」

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発達障害の子の中学受験についてよくある質問

Q. 発達障害の子どもでも中学受験はできますか?
できます。ただし「すべての子に向く」とも「向かない」とも言えません。特性の内容・子どもの意欲・家庭のサポート体制・志望校の環境によって大きく変わります。まず「なぜ受験するか」を家族で整理することから始めてみてください。

 

Q. 発達障害の子に合った中学校はどう探せばいいですか?
偏差値より「環境」を先に絞り込むことをおすすめします。クラス人数・発達支援体制・試験配慮の有無・校風などの条件を確認し、実際の学校説明会や個別相談で空気感を確かめる方法が有効です。

 

Q. 発達障害の子の受験勉強で、塾とオンライン指導はどう使い分けますか?
一般的には「塾メイン+苦手科目のみオンライン補強」「オンライン中心」「塾で通常学習→直前期だけオンライン追加」の3パターンが多く見られます。お子さんの特性と体力に合わせて設計することが重要です。

 

Q. 受験勉強中に子どもが不安定になったらどうすればいいですか?
まず学習を止めて、子どもの話を聞く時間を設けることをおすすめします。「休んだ分を取り戻さなければ」というプレッシャーを一旦手放し、回復を優先することが長期的には合格への近道になることがあります。専門家(スクールカウンセラー・主治医等)への相談も並行してご検討ください。

 

Q. 講師に子どもの特性をどこまで伝えるべきですか?
診断名よりも「具体的な困りごと」「得意なこと」「こうしてほしい配慮」を伝える形が、講師側も対応しやすいです。初回の体験レッスン後にフィードバックを見ながら、徐々に共有範囲を広げていくやり方もあります。

 

まとめ:特性を踏まえた「無理のない受験戦略」は立てられる

発達障害のある子どもの中学受験は、特性を無視して「みんなと同じ方法で頑張る」ことよりも、特性を踏まえた無理のない戦略を設計することが成功のカギです。

志望校の選び方、塾とオンラインの組み合わせ方、不調の日の対処設計——それぞれを一つずつ考えていけば、受験という選択肢はずっと現実的なものになります。そしてもし途中で「やっぱり受験しない」という決断をしたとしても、それもまた正しい戦略のひとつです。

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参考文献

  • 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(2022年)
  • 厚生労働省「発達障害について」(2023年)

この記事の著者

まなぶてらす編集部

まなぶてらす編集部

「まなぶてらす」は、勉強も習い事もひとつの場所で学べるオンライン家庭教師サービスです。一人ひとりの「好き」や「得意」を伸ばし、お子さまの強みを育てることを大切にしています。学びに関する最新情報や、家庭学習に役立つ知識をお届けします。

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この記事の監修者

るか先生

伊藤 陽香(るか先生)

臨床心理士・公認心理師

臨床心理士(10年目)・公認心理師(第1回国家試験合格)。スクールカウンセラーとして小中高19校で勤務し、発達障害・不登校の児童生徒へのカウンセリングや保護者相談を多数実施。精神科病院での心理検査、放課後等デイサービスでの個別療育の経験も持つ。愛知淑徳大学大学院心理学研究科修了。

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