「学校の勉強で自信を失ってしまったわが子に、何かひとつ『できた』という体験を積ませてあげたい」——発達障害(神経発達症)のお子さんを持つ保護者の方から、こんな声をよく耳にします。

文部科学省の調査(2022年度)によると、通常学級に在籍する小中学生のうち、学習面や行動面に著しい困難を示す割合は約8.8%と報告されています。発達特性を持つ子どもの多くが、勉強の場では「できない」経験を積み重ねやすい環境に置かれています。

「何を選べばいいかわからない」「続けられるか心配」——そうした不安が少しでも和らぐよう、習い事を通じて自己肯定感を育てるための選び方と、オンラインで無理なく始めるコツを、具体的な判断軸と実践のヒントとともにお伝えします。

なぜ「勉強以外」から入ることが大切なのか?自己肯定感と達成感の関係

発達特性のあるお子さんの習い事を考えるとき、最初にぶつかる疑問が「そもそも、なぜ勉強以外から入る必要があるのか」という点ではないでしょうか。ここでは、学校という場で自信を失いやすい背景と、習い事が『安全な挑戦の場』として機能する理由を、三つの角度から見ていきます。

学校の勉強で自信を失いやすい背景

発達特性を持つ子どもは、学校という環境で「できないこと」を意識させられやすい傾向があります。授業のペース、集団行動のルール、静かに座ること——学校が求めることの多くが、特性とぶつかりやすいからです。

たとえば、ADHDの特性があるお子さんは、不注意や衝動性から授業中に指摘を受ける場面が重なりやすく、その積み重ねが「自分はダメだ」という感覚につながっていくケースを、監修者のるか先生もスクールカウンセラーとして数多く見てきました。ASDの特性がある子どもは、予期しない変化や感覚刺激に強いストレスを感じることがあり、集団での活動が疲弊につながることもあります。

ただし、同じADHDでも、同じASDでも、お子さんによって現れ方は大きく違います。「うちの子には当てはまらないかも」「うちの子はもっと別の形で困っている」——そう感じる方も、きっといらっしゃるはずです。大切なのは、一般論ではなくお子さま一人ひとりの様子を見て、合う環境を少しずつ探していくことです。

「できた」体験が自己肯定感を育てるメカニズム

自己肯定感は、小さな達成体験の積み重ねによって育まれていくと考えられています。勉強という一点だけで「できる・できない」を判断されてきた子どもにとって、習い事は「自分にも得意なことがある」と気づく場になる可能性があります。

将棋で次の一手を読んだとき、絵を描いて「うまくなった」と感じたとき——そうした体験の蓄積が、日常の自信につながっていくことがあります。すべてのお子さんに当てはまるわけではありませんが、勉強以外の「できた」がある空間は、それ自体に意味があります。

習い事が「安全な挑戦の場」になる理由

習い事には、学校と違ういくつかの特徴があります。

1対1またはごく少人数で進めることが多い
本人の「好き」や「得意」を軸に設計されている
・失敗してもその場ですぐやり直せる
・「テストで点数を取る」というプレッシャーがない

こうした環境があるからこそ、発達特性のあるお子さんが「失敗してもいい」「自分のペースでいい」と感じやすくなる——これは多くのお子さんに共通する手応えだそうです。

発達障害の子に向く習い事の選び方——3つの判断軸

習い事選びで「何を基準に選べばいいかわからない」という声を、保護者の方からとてもよくいただきます。発達特性のあるお子さんの場合、特性との相性を丁寧に確認することで、続きやすさがまったく違ってきます。

ここでは、迷ったときに立ち返ってほしい3つの判断軸を紹介します。

①感覚負荷:音・光・人数の刺激は大丈夫か

感覚過敏のあるお子さんにとって、環境の刺激量は習い事の継続に直接影響します。大人数が集まる教室、大きな音が出る楽器の発表会、強い照明——これらが強い不快感につながるケースがあります。

事前に確認しておきたいポイントとしては、次のようなものがあります。

  • 参加人数は何人か(少人数ほど刺激が少ない傾向)
  • レッスン中に突然の大きな音が出るか
  • 場所の切り替えや移動が多いか
  • 衣装や道具に素材の指定があるか

オンラインレッスンであれば、自宅という慣れた環境で受けられるため、感覚負荷を大幅に抑えられることが多いです。

②継続可能性:送迎・時間帯・予約の柔軟さ

習い事が長続きしないもっとも多い理由のひとつが、「通うこと自体の負担」です。送迎時間、曜日の固定、体調による欠席のしにくさ——こうした条件が積み重なると、保護者もお子さんも疲弊してしまいます。

選ぶ際には、以下を確認してみてください。

  • 予約の変更・キャンセルがしやすいか
  • 体調不良でも振り替えできるか
  • 子どもの体力に合わせた時間帯に設定できるか

③本人の「好き」を優先する(親の期待を先行させない)

習い事の目的は「将来の役に立つから」ではなく、「今、その子が楽しめるから」で十分です。親が「将棋をやらせれば集中力がつくはず」と考えてスタートしても、お子さん本人に興味がなければ続きません。

まず「あなたは何をやってみたい?」という問いかけから始めてみてください。答えが出にくい場合は、いくつか体験してから選ぶ方法もあります。親の期待よりも先に、子どもの「好き」を確認することが、長続きする習い事選びの基本です。

オンライン習い事が合うケース・慎重にしたいケース

「オンラインって、うちの子でも大丈夫かな」——これもよくいただく質問です。結論から言えば、オンラインが持つ「自宅で受けられる安心感」は発達特性のあるお子さんと相性が良い一方、端末操作や画面注視が難しいお子さんには少し工夫が必要です。

ここでは合うケース・慎重にしたいケースの両方と、最初の2週間の過ごし方までセットでお伝えします。

自宅の安心感が集中につながる子

オンラインレッスンの最大のメリットは、「自宅で受けられること」です。新しい環境への適応にエネルギーを使いやすい発達特性のあるお子さんにとって、見慣れた部屋でそのままレッスンに入れることは、大きな安心感につながります。

移動の疲れがなく、終わったらすぐ自分の空間に戻れる——これは体力的・精神的な負担を減らし、レッスン自体のエネルギーを確保することにもつながります。

端末操作・画面注視が難しい子への工夫

一方で、長時間の画面注視が難しいお子さんや、端末の操作に馴染みがない場合は、事前の準備が必要です。

試してみると良い工夫:
・最初は15〜20分程度の短いレッスンから始める
・カメラをオフにする選択肢があるか確認する
・レッスン前に端末の操作を一緒に練習しておく
・休憩のタイミングを講師と決めておく

最初の2週間の過ごし方——親の見守りの距離感

最初の2週間は、親が近くにいて「見守る」ことが鍵です。ただし、「ちゃんとやっているかな」という視点ではなく、「楽しそうかな、困っていないかな」という観察に留めるのがポイントです。

レッスン後に「どうだった?」と聞くのも、評価ではなく「楽しかった?」という感情の確認から始めると、子どもが話しやすくなります。

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習い事から勉強への橋渡し——無理のないステップ

「習い事がうまくいったら、次はそろそろ勉強にも……」そんな期待が頭をよぎるのは、保護者として自然なことです。ただ、発達特性のあるお子さんの場合、この「橋渡し」を急ぐと逆効果になることが少なくありません。

ここでは、焦らずに学習へつなげていくための考え方と、「習い事だけの時期があってもいい」という選択肢についてお話しします。

興味の延長にある「小さな学習タスク」

習い事で育まれた「好き」や「できた」は、学習への入り口になることがあります。たとえば、将棋が好きになったお子さんが棋譜の記録に興味を持ち、算数の数の概念に親しみを持つようになったケース。絵を描くのが好きになったお子さんが、描いた絵にセリフをつけるうちに文章を書くことへの抵抗が減ったケース。

これらはあくまで一例であり、すべてのお子さんに当てはまるわけではありません。「習い事→学習」を意図的に結びつけようとしないことが、長続きのコツです。興味が自然に広がるのを待つ姿勢が、長期的には有効です。

橋渡しを急がない——習い事だけの時期があってもいい

「習い事は始めたけど、勉強にはまだ繋がっていない」——それでいいのです。自己肯定感を育てるという目的において、習い事そのものが成果です。橋渡しのタイミングを焦ると、せっかくの「安全な場」がプレッシャーの場になってしまいます。

まなぶてらすでは、習い事の指導も学習サポートも同じ予約システムで一本化できるため、「慣れてきたら少し勉強も試してみようか」という自然な流れを作りやすいのも特徴です。

まなぶてらすで「習い事から学習へ」を1つの予約枠でつなぐ

まなぶてらすは、英語・プログラミング・そろばん・将棋・イラストなど、多様な習い事対応の講師が在籍しています。勉強の指導も、習い事の指導も、同じ仕組みで予約できるため、お子さんの状況に合わせて柔軟にシフトできます。

発達特性のあるお子さんに指導経験のある講師も多く在籍しており、「どの先生が合いそうか」を試しながら選べる体験レッスン制度もあります。

発達障害のお子さまを指導した経験のある講師たち

まなぶてらすには、発達特性のあるお子さまへの指導経験を持つ講師が多数在籍しています。ここでご紹介する3名は、特別支援の研修経験や発達特性のある生徒への指導実績があり、保護者の方からの評価も高い先生方です。

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そうへい先生

そうへい 先生

将棋で「先を読む力」と思いやりの心を育む。元将棋新聞記者・書籍編集者。10年以上のキャリアを持ち、駒の動かし方を知らない初心者から上級者まで対応。勝つ喜びを感じながら、自分で考える習慣を身につけます。

口コミ:「将棋の楽しさはもちろん、将棋を通してもっと大事なことを教えてくれる。生徒のことを本当に大切にしてくれる先生」

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さかさい先生

さかさい 先生

プロのイラストレーターと元小学校教諭の視点を持つ。特別支援教育の研修受講経験あり。「絵を描きたい」という気持ちに寄り添いながら、デジタルイラストの技術を楽しく伸ばします。

口コミ:「絵心がないので心配でしたが、恥ずかしい思いをすることもなく楽しくレッスンができました。うまく見えるコツを教えてもらいました」

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よしむら先生

よしむら 先生

絵画講師歴9年、発達特性のある生徒への指導経験豊富。多摩美術大学卒。デッサン・水彩・アクリル・油絵など幅広く対応。コミュニケーションを大切にした穏やかな指導スタイルで、苦手意識のある子も安心して楽しめます。

口コミ:「絵に苦手意識のある息子が、優しい話し方と雰囲気の先生のおかげでリラックスして楽しそうにレッスンを受けることができました」

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発達障害の子の習い事——保護者からよくある質問

Q. 発達障害の子どもに向いている習い事は何ですか?
「この習い事が一番よい」という正解はありません。特性や本人の「好き」によって異なります。将棋・絵・工作・音楽など、個人のペースで進めやすい習い事は選びやすい傾向がありますが、まずは体験してから判断することをおすすめします。

Q. 発達障害の子の自己肯定感を育てるにはどうすればいいですか?
小さな「できた」を積み重ねることが大切と考えられています。習い事はその場のひとつになりえます。結果よりも過程をほめること、失敗してもやり直せる環境を用意することが、自己肯定感の土台になります。

Q. オンラインの習い事は発達障害の子でも続けられますか?
続けやすいお子さんも多くいます。自宅という慣れた環境で受けられること、感覚刺激を抑えられること、送迎の負担がないことが主な理由です。最初は短い時間から始めると馴染みやすいでしょう。

Q. 習い事を始めるとき、特性をどこまで先生に伝えるべきですか?
「この子が安心してレッスンを受けるために必要な情報」を伝えることをおすすめします。診断名よりも、「大きな音が苦手です」「急な変更が難しいです」など、具体的な配慮事項の方が先生も対応しやすくなります。

Q. 習い事と勉強の両立はどう考えればいいですか?
習い事から始め、自信がついてきたら勉強につなげるというステップが、発達特性のあるお子さんには合いやすいと言われています。両立を急ぐよりも、まずは習い事を楽しめる時間を確保することを優先してみてください。

まとめ:無理のない一歩から始めれば、自信は少しずつ育つ

発達障害のあるお子さんの習い事選びは、「特性に合っているか」「継続できる環境か」「本人が楽しめるか」の3軸で考えることが出発点です。オンラインは感覚負荷を抑えやすく、送迎の負担もないため、継続のハードルを下げる選択肢になります。

焦らなくていいです。習い事だけの時期が続いても、それはお子さんが「安全な場」で自分を積み重ねている時間です。

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参考文献

  • 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(2022年)
  • 厚生労働省「発達障害について」(2023年)

 

この記事の著者

まなぶてらす編集部

まなぶてらす編集部

「まなぶてらす」は、勉強も習い事もひとつの場所で学べるオンライン家庭教師サービスです。一人ひとりの「好き」や「得意」を伸ばし、お子さまの強みを育てることを大切にしています。学びに関する最新情報や、家庭学習に役立つ知識をお届けします。

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この記事の監修者

るか先生

伊藤 陽香(るか先生)

臨床心理士・公認心理師

臨床心理士(10年目)・公認心理師(第1回国家試験合格)。スクールカウンセラーとして小中高19校で勤務し、発達障害・不登校の児童生徒へのカウンセリングや保護者相談を多数実施。精神科病院での心理検査、放課後等デイサービスでの個別療育の経験も持つ。愛知淑徳大学大学院心理学研究科修了。

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