金融教育は何歳から?元国家公務員だからできる「お金の授業」|亜子先生インタビュー
※本記事には「まなぶてらす」のサービス紹介が含まれます
「お金を増やす方法は、働くだけではないんだよ」——この一言から、算数嫌いだったある生徒さんの表情が変わりました。
アメリカでは今、高校を卒業するために「お金の授業」を受けることを義務づける州が急速に増えています。一方の日本では、2022年度に高校で金融教育が拡充されたばかり。「お金について学ぶ機会」に、日米で大きな差が生まれつつあります。
そんな中、オンライン家庭教師「まなぶてらす」には、中央省庁で国家公務員として働いた経験を活かして「お金の授業」を行う先生がいます。亜子先生、その人です。今回は亜子先生に、子どもたちがお金をどう学んでいるのか、そして小中高の時期に金融教育を始める意義について、じっくり聞きました。
アメリカでは「お金の授業」を受けないと卒業できない州が増えている
2026年3月時点で、アメリカ50州のうち39州が、何らかの形で金融教育(パーソナルファイナンス)を高校卒業の要件にしています。米国の経済教育協議会(Council for Economic Education)の調査によると、26州が独立した科目として、13州が経済などの科目に組み込む形で必修化しています。
2026年にはカリフォルニア州・デラウェア州・コロラド州・ハワイ州の4州が新たに必修化を決め、約230万人の高校生が対象になると報じられています。「お金の知識は、大人になる前に学校で身につけるもの」という考え方が、アメリカでは当たり前になりつつあるのです。
日本の金融教育は2022年に始まったばかり——学校だけで足りる?
日本でも2022年4月から、高校の家庭科で「家計管理」や資産形成が、公民科の「公共」で金融市場のしくみが扱われるようになりました。背景には、成年年齢が18歳に引き下げられ、高校生でもクレジットカードの契約などが自分の意思だけでできるようになったことがあります。
ただ、投資や資産形成は先生方にとっても専門外の分野。金融庁が学校へ職員を派遣して出前授業を行うなど、現場はまだ手探りの段階と言われています。この日米のギャップを、亜子先生はどう見ているのでしょうか。
「日本でも金融教育が始まったことは、とても良い変化だと思います。一方で、アメリカでは長年かけて金融教育が進められてきたため、学ぶ機会や教材も充実しています。その点では、日本はまだこれから発展していく段階だと感じます」
そのうえで、亜子先生は日本ならではの可能性も指摘します。
「日本は始まったばかりだからこそ、新しい制度や社会の変化に合わせて、学びやすい教育を作れるという良さもあります。これからは学校だけでなく、家庭でもお金について話す機会が増えていくことが大切だと思います」
亜子先生
家庭でお金について話す機会を増やしていくことが大切です。日常の会話そのものが、子どもにとって一番身近な金融教育の入り口になります。
先生の人柄や指導の様子をインタビュー形式で紹介した記事として、不登校のお子さんを3年間伴走したたたみ先生のインタビューもあわせて参考になります。
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元国家公務員だから伝えられる「制度を知って、自分で選んで使う力」
亜子先生の「お金の授業」の土台には、中央省庁で制度づくりに携わった経験があります。税金や年金、社会保障などの制度がどのように作られ、運用されているのかを、内側から見てきました。
「その中で感じたのは、日本では『貯金だけでは資産を増やしにくい時代』になってきているということです。そのため、国もNISAなど、少しずつ金融リテラシーを身につけられる制度を整えてきました」
もともと大学で経済学を学び、世の中のお金の流れが数式で表せることに面白さを感じたという亜子先生。国家公務員として資産形成を後押しする制度づくりに関わる中で、ある現実を目の当たりにします。
「多くの人が制度を活用している一方で、知識がないために損をしたり、金融トラブルに巻き込まれたりする人もいることを知りました。『知っているかどうか』で将来が大きく変わることを実感し、金融教育の大切さを伝えたいと思うようになったんです」
だからこそ授業で伝えるのは、「制度があるから安心」ではなく、「制度を知って、自分で選んで使う力」。お金の知識は大人になってからではなく、子どものうちから少しずつ身につけていくことが、将来の選択肢を広げることにつながると亜子先生は言います。
亜子先生
「知っているかどうか」で将来は大きく変わります。制度に頼るのではなく、制度を自分で選んで使える人に育ってほしいと思っています。
ゲームの課金から株のしくみへ——その子の「好き」から始まる授業
亜子先生の授業は、教科書の順番ではなく「その子の興味」から組み立てられます。これこそ、学校の一斉授業にはない、個別指導ならではの強みです。
「例えばゲームが好きな子なら、『課金のしくみ』をテーマに、そこからクレジットカードやプリペイドカードでの支払いについて考えます。『ゲーム会社はどうやって利益を出しているのか』から、銀行や株について勉強することもあります」
「将来起業したい子なら、『会社のお金の流れ』や『利益を出すにはどうしたらいいか』を一緒に考えます。スポーツが好きな子ならプロ選手の年俸やスポンサー、好きなブランドがある子なら商品の値段や企業の利益など、身近な話題からお金について学べるようにしています」
レッスンの入り口も、お金の話からではありません。まず「将来どんなことをしてみたい?」「好きなことは何?」という話から始まります。
「『ゲームを作りたい』と答えたら、『そのためにはどんな仕事があるかな?』『勉強やお金はどう関係するかな?』と一緒に考えていきます。お金の知識を学ぶことが目的ではなく、自分の夢や価値観を実現するための道具として、お金について考えてもらうようにしています」
自作のスライド教材にも、そんな考え方が表れています。見ただけで理解しやすいことを一番大切にしつつ、あえて情報は詰め込みすぎず、最低限の内容に。その代わり、生徒自身が授業中にメモを書き込み、後から見返して復習できる教材になるよう工夫しているそうです。
「『なぜそうなるのか』が自然に理解できるように、順番に考えながら学べる構成にしています。ただ答えを覚えるのではなく、理由まで理解し、自分で考える力が身につく教材を目指しています」
「働くのは大変そう」——算数が苦手だった子が、投資の計算で変わった
お金の授業は、教科の学びにもつながっていきます。亜子先生が印象に残っているのは、算数が苦手だったある生徒さんの変化です。
「最初のきっかけは、『お金を増やす方法は働くだけではない』という話でした。その生徒さんは『働くのは大変そう』というイメージを持っていたので、投資という考え方に興味を持ったんです」
そこから、「毎月決まった金額を積み立てたら何年後にいくらになるかな?」「3%ずつ増えたらどうなるかな?」という計算を、一緒にするようになりました。
たとえば毎月1万円を年3%で運用しながら積み立てると、10年後には約140万円と、貯金だけの場合(120万円)を上回ります。20年後には約328万円になり、その差は88万円まで広がります。こうした計算を自分の手で確かめるうちに、生徒さんは変わっていきました。
「『この計算ができるようになると、お金のことがもっと分かる』と実感して、自然と割合や計算に前向きになっていきました。苦手だった算数が『自分の将来につながる勉強』だと思えたことが、大きな変化だったと思います」
公務員試験を目指す社会人に、数学を基礎から教え直してきた経験もある亜子先生。「基礎からやり直したい」という生徒への向き合い方には、教科を超えた共通点があると言います。
「どの教科でも、『どこでつまずいたのか』を一緒に探すことを大切にしています。基礎が分かるようになると、『自分にもできる』という自信が生まれます。その自信が意欲につながる。お金の勉強でも他の教科でも、一人ひとりのペースに合わせて、小さな成功体験を積み重ねることを意識しています」
亜子先生
お金の学びは、教科の学びの入り口にもなります。「自分の将来につながる」と思えたとき、子どもは苦手な勉強にも前向きになれるんです。
金融教育は何歳から?年代別に変わる「お金の学び」
「金融教育は何歳から始めるべきですか?」——保護者の方が最も気になるところですが、亜子先生の答えは「それぞれの年代に、それぞれの意味がある」です。
「小学生は、お金の大切さや使い方、貯める習慣を楽しく学ぶ時期です。中学生は、お小遣いやアルバイト、お金のニュースなどを通して、『お金が社会とどうつながっているか』を考え始める時期。高校生になると、進学や就職が近づき、自分でお金を管理する場面が増えます。投資や税金、社会保険など、将来に直結する知識を学ぶことで、大人になる準備ができます」
では、始めるのに「正解のタイミング」はあるのでしょうか。亜子先生は、こう言い切ります。
「金融教育は、『早すぎる』『遅すぎる』ということはありません。始めたいと思ったその日が、一番良いタイミングです」
「自分が学ぶ機会がなかったから」——保護者が金融教育を求める理由
実際に、どんなきっかけで「お金の授業」を受け始める家庭が多いのでしょうか。亜子先生によると、一番多いのは保護者自身の実感からくる相談だそうです。
「『自分がお金について学ぶ機会がなかったので、子どもには早いうちから学んでほしい』というご相談が一番多いです。NISAや投資のニュースを見て『これからは知識が必要だ』と感じ、危機感を持たれる保護者の方も増えています。ほかにも、お子さんがお金に興味を持ち始めたり、お小遣いの使い方に悩んだことをきっかけに相談されるケースもあります」
子どもの勉強への向き合い方が変わった保護者の実例は、子どもの勉強嫌いが変わった体験談10選でも紹介しています。また、習い事や塾の費用を見直したい方には塾代がきつい時の対処法4選も参考になります。
まなぶてらすは、勉強も習い事もひとつの場所で学べるオンライン家庭教師サービスです。金融教育のような学校の教科以外の学びも、その子の興味やペースに合わせてマンツーマンで受けられます。
最後に、これから金融教育を考えている保護者の方・生徒さんへのメッセージを聞きました。
「完全個別指導だからこそ、それぞれの興味や夢、これまでの経験に合わせて学ぶことができます。授業では、ぜひ自分の体験や疑問、知っていることをたくさん話してください。一緒に考えながら学ぶことで、お金の知識だけでなく、自分の将来について考える力も身につけていけると思います」
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よくある質問
Q. お金の授業は何歳から受けられますか?
小学生から受けられます。小学生はお金の大切さや使い方を楽しく学び、中学生はお金と社会のつながりを考え、高校生は投資や税金など将来に直結する知識を学ぶ——というように、年代に合わせて内容を変えて進めます。
Q. 実際に投資をする授業なのですか?
いいえ、実際にお金を運用する授業ではありません。お金や経済のしくみ、NISAのような制度を「知って、自分で選んで使う力」を育てる知識の授業です。積立の計算を一緒にするなど、考える力を養うことを大切にしています。
Q. 算数や数学が苦手な子でも大丈夫ですか?
大丈夫です。「どこでつまずいたのか」を一緒に探すところから始めます。実際に、投資の計算をきっかけに苦手だった算数へ前向きになった生徒さんもいます。一人ひとりのペースに合わせて、小さな成功体験を積み重ねていきます。
Q. 何から始まるのですか? いきなりお金の話をするのでしょうか?
まず「将来どんなことをしてみたい?」「好きなことは何?」という話から始まります。そのうえで、その子の興味に合わせてお金の話につなげていくので、お金の知識がゼロでも安心して受けられます。
参考文献
この記事の著者
まなぶてらす編集部
「まなぶてらす」は、勉強も習い事もひとつの場所で学べるオンライン家庭教師サービスです。一人ひとりの「好き」や「得意」を伸ばし、お子さまの強みを育てることを大切にしています。学びに関する最新情報や、家庭学習に役立つ知識をお届けします。
取材協力
亜子 先生
まなぶてらす講師・元国家公務員
国立大学卒業後、中央省庁にて国家公務員として勤務。税金・年金・社会保障などの制度づくりに携わった経験と投資経験を活かし、「お金の授業」を行う。指導歴8年。メモリーツリーを使った暗記法や新聞を使った要約指導、主要5教科の学習指導、公務員試験の受験指導にも対応。