ADHDの子の宿題問題|なぜ終わらない?親ができるサポート3パターン
※本記事には「まなぶてらす」のサービス紹介が含まれます
「宿題をやりなさいと何度言っても終わらない」というご相談は、カウンセリングの現場で非常によく聞く悩みです。これは本人のやる気の問題というより、「実行機能」と呼ばれる脳の働きに関わる特性である場合が多くあります。この記事では、なぜ宿題が終わらないのかという原因を整理したうえで、家庭でできるサポートを3つのパターンに分けてご紹介します。
なぜADHDの子は宿題が終わらないのか?「やる気」ではなく「実行機能」の問題
ADHD(注意欠如多動症)は発達障害(神経発達症)の一つです。ADHDの特性として、実行機能と呼ばれる「段取りを組み立てて実行する力」に困難が生じやすいことが知られています。実行機能には、複数の情報を一時的に保持しておく「作業記憶」、やるべきことの優先順位をつける力、衝動を抑える力などが含まれます(出典:発達障害ナビポータル)。
実行機能に関わる前頭前野は、25歳頃まで発達が続くとされ、ADHDのある子どもではその発達が定型発達の子どもより遅れる傾向があるという報告もあります。「宿題を後回しにしがち」という様子は、まさにこの優先順位づけの困難として説明できる場合があります。文部科学省の令和4年度調査では、通常学級に在籍する児童生徒のうち学習面又は行動面で著しい困難を示す割合は8.8%で、前回調査から2.3ポイント増加しています(出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」)。
実行機能のどこでつまずいているかを見極める
宿題が終わらない原因は、すべての子どもで同じというわけではありません。「何から手をつければいいか分からない」のか、「途中で気が逸れてしまう」のか、「時間の見積もりが苦手」なのか、つまずいているポイントによって効果的なサポートは変わってきます。
たとえば、宿題の量を見た瞬間に固まってしまう場合は優先順位づけの困難、始めたと思ったら別のことをし始める場合は注意の持続の困難、「あと5分で終わる」と思っていたのに1時間かかる場合は時間の見積もりの困難が背景にあると考えられます。まずはお子さんがどのタイプに近いかを観察することが、サポートの出発点になります。
観察のヒントとして、「宿題の量を見せたときの表情」「取りかかった後の様子」「時間の見積もりの正確さ」の3点を数日メモしておくと、どのタイプの困難が強く出ているかが見えやすくなります。
サポート3パターン—①環境調整型 ②スモールステップ型 ③見える化型
1つ目は「環境調整型」です。宿題をする場所からおもちゃやスマホなど気が逸れるものを取り除き、机の上をシンプルにするだけでも、注意の持続時間が変わることがあります。タイマーを使って「あと10分」と区切るのも環境調整の一種です。宿題をする場所を毎回同じ場所に固定する、視界に入る棚や壁をなるべく無地にするといった小さな調整も、取りかかりやすさにつながります。
2つ目は「スモールステップ型」です。宿題全体を一度に見せるのではなく、「まず漢字を5個」「次に計算問題を3問」のように小さな単位に分割して提示すると、取りかかりやすくなります。難しい問題からではなく、易しい問題から順に並べる「易→難」の順序化も、取りかかりのハードルを下げる工夫の一つです。1つ終えるごとに短い休憩をはさむ「作業→休憩」の繰り返しにすると、集中力の波に合わせて宿題を進めやすくなります。
3つ目は「見える化型」です。やることリストをチェックリストにして目に見える形にしておくと、進捗が実感でき、次に何をすべきかが一目で分かります。終わったタスクにチェックを入れる達成感が、次の行動への動機づけにもつながります。ホワイトボードやマグネット式のToDoボードを使い、終わったタスクを「動かす」動作を加えると、達成感がより実感しやすくなります。
癇癪を伴う場合の感情面での関わり方については毎晩の宿題で癇癪を起こす…なぜ?発達障害の子が崩れる理由と、今夜から使える関わり方で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。集中できる環境づくり全般についてはADHDの子どもが集中して勉強できる環境づくりも参考になります。中学生・高校生で受験を控えている場合は発達障害・ADHDの子の高校受験、どう乗り越える?もあわせてご確認ください。
実行機能の困難は、学年が上がって課題の分量が増えるほど目立ちやすくなる傾向があります。低学年のうちから「小さく分けて取り組む」経験を積み重ねておくと、学年が上がったときの負担も軽減しやすくなります。宿題だけでなく、持ち物の準備や翌日の予定確認など、日常生活の中にも同じ3パターンの工夫を応用できます。
実行機能に配慮した宿題サポートができる講師3名
よくある質問
Q. 宿題が終わらないのは甘えではないのですか?
甘えと決めつけず、実行機能の特性が背景にある可能性を考えてみてください。作業記憶や優先順位づけの困難は、本人の努力不足ではなく脳の働き方の特性によるものです。叱ってやる気を引き出そうとするよりも、まず特性を理解したうえで環境や進め方を工夫するほうが、結果的に近道になることが多いです。
Q. 3つのパターンはどう組み合わせればいいですか?
1つに絞る必要はなく、お子さんの様子を見ながら組み合わせて試すことをおすすめします。まずは環境調整から始め、それでも難しければスモールステップや見える化を加えていくとよいでしょう。1つのパターンだけで変化が見えにくいときも、焦らず2〜3週間ほど様子を見ながら組み合わせを調整してみてください。
Q. 何度言っても宿題に取りかからないときは?
「宿題をやりなさい」という声かけより、「まず1問だけやってみよう」のように具体的で小さな行動を提案すると、取りかかりやすくなる場合があります。声をかけるタイミングも、宿題を出した直後よりも、他の活動が一区切りついたタイミングの方が反応しやすいことがあります。
Q. 癇癪を起こしてしまう場合はどうすればいいですか?
感情面での関わり方については、関連記事「毎晩の宿題で癇癪を起こす…なぜ?発達障害の子が崩れる理由と、今夜から使える関わり方」で詳しく解説しています。
Q. 学校の先生にはどう相談すればいいですか?
宿題の量やペースについて、担任の先生に率直に相談してみることをおすすめします。学校と家庭で同じ方針を共有できると、お子さんも安心して取り組みやすくなります。連絡帳や電話だけでなく、学期はじめの面談の機会に日頃の様子を共有しておくと、必要なときにスムーズに相談しやすくなります。
まとめ
宿題が終わらない背景には、実行機能の特性が関わっている場合があります。環境調整型・スモールステップ型・見える化型という3つのパターンを組み合わせながら、お子さんに合った進め方を見つけていくことが大切です。感情面でのサポートが必要な場合は関連記事もあわせて参考にしてください。
この記事の著者
この記事の監修者
伊藤陽香(るか先生)
臨床心理士・公認心理師
臨床心理士(11年目)・公認心理師(第1回国家試験合格)。スクールカウンセラーとして小中高18校で勤務し、発達障害・不登校の児童生徒へのカウンセリングや保護者相談を多数実施しています。精神科病院での心理検査、放課後等デイサービスでの個別療育の経験も持ちます。愛知淑徳大学大学院心理学研究科修了。




