こんにちは、まなぶてらす代表の坂本です。

「15 × 7」や「25 × 9」——こうした “一の位が5の数 × 奇数” のかけ算を見た瞬間、お子さまの手が止まっていませんか?

前回の第1回で、「一の位が5 × 偶数」なら”2倍と半分”のテクニックで一瞬というお話をしました。では、相手が奇数の場合はどうするか——実はこちらも、少し工夫するだけで第1回のテクニックがそのまま使えるようになるんです。

この記事は、全15回連載 「計算が2倍速くなる!中学受験生のための計算スピードアップ術」 の第2回。今回は、奇数をかけるときに威力を発揮する「引き算に変える」計算テクニックをご紹介します。単に時間短縮を目的としたものではなく、式を頭の中で組み替えることで思考力も育つ”賢くなる計算テクニック”として、ぜひ親子で試してみてください。

この記事を読むとわかること

  • 15×7、25×9、35×3 が暗算で即答できるようになる
  • 第1回で学んだテクニックを奇数の計算にも応用する方法
  • 中学受験頻出の「5の倍数×奇数」パターンを素早くさばくコツ
  • 計算テクニックの「土台」としてのそろばん暗算の役割と始めどき
  • 2つの計算回路を持つことが自然な”検算”となり、計算ミスが激減する理由
  • 式を頭の中で変形する練習が、思考力を育てる「賢くなる計算テクニック」である理由

なぜ「一の位が5 × 奇数」は難しく感じるのか?

結論:奇数のままだと「2倍・半分」テクニックが使えないためです。

第1回で学んだ「一方を2倍、もう一方を半分にして10の倍数を作る」という方法は、両方を整数に保てる場合にしか使えません。相手が7や9のような奇数だと、半分にすると3.5や4.5になって計算がぐちゃぐちゃに。

たとえば「15 × 7」を無理にやると:

15 × 7
↓ 15を2倍、7を半分にすると…
30 × 3.5 ← 小数が出て逆に面倒に!

そこで、奇数を「一つ先の偶数」に置き換えてから、後で引き算で調整する——これが今回のテクニックの核心です。

「引き算に変える」基本テクニック3ステップ

結論:奇数に1を足して偶数に変え、余分な1回分を後で引く。

例として 15 × 7 を解いてみます。

「引き算に変える」3ステップ

ステップ1:奇数に1を足して偶数にする(7 → 8)
ステップ2:第1回のテクニックで 15 × 8 = 120 を先に計算
ステップ3:元の数(15)を1回分引く → 120 − 15 = 105

式で書くとこうなります。

15 × 7
= 15 × (8 − 1)
= 15 × 8 − 15
= 120 − 15
= 105

なぜこれで答えが合うのか?

「15を7回足したい」のを、「15を8回足してから、多すぎた1回分を引いて戻す」と言い換えているだけです。算数で習う「分配法則」そのもの。

15 × 7 = 15 × (8 − 1) = 15 × 8 − 15 × 1 ✓

第1回のワザと組み合わせて「本当の一瞬」へ

結論:今回のテクニックの真価は、第1回の”2倍・半分”と合体させたときに発揮されます。

先ほどの「15 × 8 = 120」の部分、実はこれ自体が第1回で学んだテクニックの出番です。

15 × 7 を丸ごと解く流れ

15 × 7
↓(奇数+1で偶数に)
15 × 8 − 15
↓(第1回:2倍と半分)
(30 × 4) − 15
= 120 − 15
= 105

つまり、第1回+第2回の2つのワザを連続技で繰り出すイメージです。慣れると、式を見た瞬間に頭の中でパッと組み換えが起こるようになります。

他のパターンにも応用してみよう

結論:25×○、35×○、45×○、125×○ など、どれも同じ発想で攻略できます。

「一の位が5 × 奇数」の攻略パターン

もとの式 変形 答え
15 × 7 15 × 8 − 15 = 120 − 15 105
15 × 9 15 × 10 − 15 = 150 − 15 135
25 × 7 25 × 8 − 25 = 200 − 25 175
25 × 9 25 × 10 − 25 = 250 − 25 225
35 × 7 35 × 8 − 35 = 280 − 35 245
45 × 3 45 × 4 − 45 = 180 − 45 135
75 × 9 75 × 10 − 75 = 750 − 75 675
125 × 7 125 × 8 − 125 = 1000 − 125 875

表を眺めていて気づいた方もいらっしゃるかもしれません。25×10、125×10 など「×10」に変形してしまえば超カンタンです。一の位が9の奇数(9, 19, 29…)は特にこのテクニックと相性抜群です。

「一つ少ない偶数」を使う別バージョン

結論:奇数 +1 ではなく、奇数 −1 にして”足し算で調整”する方法もあります。

どちらのやり方でも正解は同じ。お子さまが使いやすい方を選べばOKです。

+1(引き算派) vs −1(足し算派)

+1(引き算) −1(足し算)
15 × 7 15 × 8 − 15 = 105 15 × 6 + 15 = 105
25 × 9 25 × 10 − 25 = 225 25 × 8 + 25 = 225

一般的には、「+1」版のほうが偶数がキリのいい数(×10、×8、×4)に寄りやすいのでおすすめ。ただし、お子さまに「引き算は苦手」という傾向があるなら、「−1」版から導入してみてください。

中学受験で、このテクニックはどの場面で使える?

結論:速さ・食塩水・旅人算など、”きれいな偶数の周辺の数”が出てくる問題で活躍します。

  • 速さの問題:時速15km × 7時間 = 105km(15×8−15)
  • 食塩水の問題:食塩25g × 9 = 225g(25×10−25)
  • 旅人算:分速35m × 9分 = 315m
  • 周期算・日数計算:1週間×7週+数日の調整
  • 体積・面積:15cm × 7cmの長方形の面積 = 105cm²

中学入試の計算では「キリの良い偶数を使えば速いはず」と思える場面がたくさん登場します。そこで一瞬だけ立ち止まって「奇数を偶数に寄せられないか?」と考える習慣をつけさせると、時間短縮効果は絶大です。

【練習問題】親子で挑戦!5秒チャレンジ(第2弾)

第1回で学んだ「2倍・半分」と、今回の「引き算に変える」を組み合わせて解いてみましょう。目標は1問5秒以内です。

練習問題(目標:1問5秒以内)

  1. 15 × 9 = ?
  2. 25 × 7 = ?
  3. 35 × 9 = ?
  4. 35 × 7 = ?
  5. 75 × 9 = ?
  6. 125 × 7 = ?
  7. 55 × 9 = ?
  8. 45 × 3 = ?

解答と解説

  1. 15 × 9 = 15 × 10 − 15 = 150 − 15 = 135
  2. 25 × 7 = 25 × 8 − 25 = 200 − 25 = 175
  3. 35 × 9 = 35 × 10 − 35 = 350 − 35 = 315
  4. 35 × 7 = 35 × 8 − 35 = 280 − 35 = 245(35×8 = 70×4 = 280 は第1回のワザ)
  5. 75 × 9 = 75 × 10 − 75 = 750 − 75 = 675
  6. 125 × 7 = 125 × 8 − 125 = 1000 − 125 = 875
  7. 55 × 9 = 55 × 10 − 55 = 550 − 55 = 495
  8. 45 × 3 = 45 × 4 − 45 = 180 − 45 = 135(45×4 = 90×2 = 180 は第1回のワザ)

全問正解できたお子さまは、第1回+第2回の合わせ技を完全に自分のものにしています。特に「×9」パターンは「×10 − 元の数」と覚えるだけで一瞬ですので、まずはそこから徹底させるのがおすすめです。

このテクニックが”面倒”に感じたら?——そろばん暗算という選択肢

結論:計算テクニックは万能ではありません。奇数のかけ算のように”ひと手間”を挟むパターンでは、「そろばん暗算」でそのまま解ける子の方が速いこともあります。

正直にお話しします。今回ご紹介したテクニック——「奇数を偶数に置き換えて、後で引き算で調整する」——は、慣れるまで少し面倒に感じるお子さまもいらっしゃいます。「これなら直接筆算したほうが速いのでは?」と疑問に思われた保護者の方もいるかもしれません。

その感覚、実は正しいんです。計算テクニックには、それぞれ得意な場面と不得意な場面があります。「一の位が5×偶数」のように変形が一瞬で決まるパターンではテクニックが圧倒的に強い一方、今回のように”ひと手間”の変形が必要なパターンでは、無理にテクニックを使うよりも 頭の中のそろばんで直接計算したほうが速い ということも起こります。

そろばん暗算なら、四則計算すべてを頭の中で処理できる

そろばんを習い、珠算式暗算(頭の中にそろばんの珠をイメージして計算する方法)が身につくと、お子さまは筆算なしで、たし算・ひき算・かけ算・わり算すべてを頭の中だけで処理できるようになります。

計算テクニック vs そろばん暗算(珠算式暗算)

計算 計算テクニック そろばん暗算
15 × 7 2ステップの変形が必要 一気に「105」
247 − 189 おつり計算(第13回で紹介) そのまま「58」
378 ÷ 6 基本的に筆算が必要 一瞬で「63」

計算テクニックは「特定のパターンで強烈に効く武器」、そろばん暗算は「どんな計算にも効く万能の土台」——両者は競合するものではなく、組み合わせて使うと最強になります。

計算力の2階建て構造

  • 2階(テクニック):本連載で紹介する15のワザ。「ここぞ」の場面で時間短縮
  • 1階(そろばん暗算):四則計算すべてを頭の中で処理する土台

1階があるから2階が活きる——この構造が、中学受験で「計算で落とさない子」を作ります。

2階建てで学ぶと、自然と”検算”機能が働く——計算ミスが激減する理由

結論:計算テクニックとそろばん暗算の両方を身につけていると、お互いが自動的に”検算”の役割を果たし、計算ミスが大きく減ります。

これは、中学受験を目指すご家庭にぜひ知っておいてほしい、2階建てで学ぶ最大のメリットです。

たとえば「25 × 12」を計算テクニックで「100 × 3 = 300」と出したあと、頭の中のそろばんでサッと確認すれば、「合っている」「ズレた」が瞬時にわかります。逆に、そろばん暗算で出した答えを計算テクニックで再検算することもできます。1つの計算を、2つの独立した回路で処理できる——これが強力な検算機能になります。

中学受験の算数では、正しい解法を思いついているのに計算ミスで失点する——というもったいないパターンが本当に多いもの。「ケアレスミスさえなければあと10点取れたのに…」という悔しい経験をされたご家庭も多いのではないでしょうか。

2つの回路を持つお子さまは、プレッシャーのかかる本番ほど強く、ミスなく安定して得点できます。「計算で落とさない」という中学受験算数の最大の武器が、この2階建て学習で手に入るのです。

そろばんの始めどきは「小学校低学年〜中学年」

珠算式暗算は、脳が柔らかい時期に始めるほど定着が早いと言われています。ベストな開始時期は小学1〜4年生。もし今「うちの子、もう少し計算が速くなってくれたら…」とお考えなら、中学受験本格スタート(4〜5年生)の前に土台を作っておくと大きな武器になります。

「もう5年生だから遅いかな…」とご心配されているご家庭もあるかもしれません。でもご安心ください。小学5年生から始めて中学受験の算数に間に合わせたご家庭も多く、ポイントは”継続できる環境”を整えること。週1回のオンラインレッスンでも、毎日10分の自宅練習を続ければ1〜2年で珠算式暗算の基礎が身につきます。

これは「賢くなる計算テクニック」——式を変形する練習の、本当の価値

結論:式を頭の中で組み替える練習には、計算スピード以上に「思考力を育てる」効果があります。

ここまで「そろばん暗算」という選択肢をご紹介してきましたが、だからといって本連載で扱う計算テクニックを練習する必要がないか、というとそんなことはありません。むしろ、“式を頭の中で変形する”練習には、スピード以上に大きな価値があります。それは——思考力を育てるきっかけになるということ。本連載をあえて「賢くなる計算テクニック」とお伝えしているのは、まさにこの観点からです。

「15 × 7 は 15 × 8 − 15 と同じだ」と見抜くには、数字の背後にある仕組みを捉える力が必要です。答えをただ覚えるのではなく、「なぜ同じになるのか」を考えながら式を組み替える——この作業こそが、算数の本質的な力、ひいては中学受験の文章題や図形問題で求められる論理的思考力の土台になります。

「賢くなる計算テクニック」の3つの効果

  • ① 計算スピードの向上:中学受験本番で”時間切れ”を防ぐ武器になる
  • ② 数の仕組みを捉える力:「なぜこれで同じ?」と考える習慣が数感覚を育てる
  • ③ 思考力の土台:式を組み替える発想が、文章題・図形問題の解法発想にもつながる

そろばん暗算が「瞬発力」だとすれば、本連載の「賢くなる計算テクニック」は「論理の筋トレ」。どちらも中学受験では欠かせない力であり、両輪で鍛えるとお子さまの算数力は大きく伸びます

今回のテクニックが少し面倒に感じたとしても、ぜひ 「なぜこれで答えが同じになるのか」を親子で話し合う時間として練習してみてください。その対話の時間は、必ずお子さまの将来の数学・理科の学習にも活きてきます。

シリーズ「計算スピードアップ術」全15回のご案内

この記事は、まなぶてらすが中学受験生の保護者向けにお届けする、全15回の計算テクニック連載の第2回です。毎日1本ずつ更新していきますので、ぜひブックマークしてお読みください。

シリーズ全15回・予定ラインナップ

  • 第0回:計算テクニックの真髄とは?「賢くなる計算力」を育てる15回シリーズ
  • 第1回:一の位が5×偶数は一瞬で解ける
  • 第2回:一の位が5×奇数は「引き算に変えて」ラクにする(今ここ)
  • 第3回:35×35が3秒!「一の位が5の2乗」テクニック
  • 第4回:25×28、75×16…「5の2乗」を応用する
  • 第5回:17×17、23×23…「離してポン」で2乗をカンタン化
  • 第6回:2桁×2桁は「ずらし書き」で速くなる
  • 第7回:11×19も瞬殺!「インド式計算法」
  • 第8回:11〜19の2乗は暗記で即答
  • 第9回:約分・倍分は3秒でラクになる
  • 第10回:約数の見つけ方①(2・3・5・9の判定法)
  • 第11回:約数の見つけ方②(難しい約分のヒント)
  • 第12回:繰り上がりのある「たし算」テクニック
  • 第13回:繰り下がりが消える「おつり計算法」
  • 第14回:”引かない”引き算(たし算で答えを出す)
  • 第15回:大きな数を「ざっくり引いて」速く解く

よくある質問(FAQ)

Q1. 奇数を偶数に変えるとき、+1 と −1 のどちらを選ぶべきですか?

A. 基本は 「+1(大きい偶数に寄せる)」を優先してください。×10、×8、×4 などキリのいい数に届きやすく、第1回のテクニックと組み合わせやすいためです。「引き算が苦手で嫌だ」というお子さまには −1 版から入り、慣れてきたら +1 版に切り替えていくのがおすすめです。

Q2. 「×9」のパターンが特別に速いのはなぜですか?

A. 「×9」は「×10 − 1倍分」に変換するだけで、桁を1つ増やしてから元の数を引くだけで答えが出るからです。たとえば 35 × 9 なら「350 − 35 = 315」。暗算のストレスが最小です。

Q3. このテクニックを覚えさせる順番のおすすめは?

A. 「×9」→「×7」→「×3」の順で導入すると、お子さまがコツを掴みやすいです。×9 は圧倒的に簡単、×7 はこのテクニックの真骨頂、×3 は計算が大きく減るパターン、という順で成功体験を積ませてあげてください。

Q4. 筆算と裏ワザ、どちらで答えを出させるべきですか?

A. 普段は裏ワザ、見直しでは筆算という使い分けが理想です。裏ワザで速く解き、答え合わせに筆算を使えば、スピードと正確性の両方が身につきます。

Q5. 算数が苦手な子でもできますか?

A. はい、できます。むしろ 算数が苦手なお子さまほど、裏ワザを覚えたときの感動が大きい傾向があります。「知ってるだけで速く解けた!」という成功体験が、苦手意識を崩すきっかけになります。最初は「×9」パターンだけでも十分です。

Q6. 中学受験のために、今からそろばんを始めても遅くないですか?

A. 遅くありません。ベストな開始時期は小学1〜4年生ですが、5年生から始めて中学受験の算数に間に合わせたご家庭も多数あります。特に「計算が遅い」「ケアレスミスが多い」というお子さまは、そろばん暗算の訓練で土台から底上げすることで、算数全体の得点力が上がるケースが多いです。まずは週1回のオンラインレッスンからでも、継続できる形でスタートするのがおすすめです。

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次回予告

第3回:35×35が3秒!「一の位が5の2乗」を瞬殺するテクニック

35×35、45×45、75×75——「同じ数を掛け合わせる2乗計算」は、じつは知ってるだけで3秒で答えが出せるワザがあります。「十の位 × (十の位+1)」と「末尾の25」を組み合わせるだけの驚くほどシンプルなルール。筆算とのスピード差にお子さまがびっくりするはず。次回もお楽しみに。

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この記事の著者

坂本七郎

坂本七郎

まなぶてらす代表・家庭学習コンサルタント

5,000人以上の保護者への学習相談実績を持つ家庭学習の専門家。著書15冊(累計26万部以上)。NHK Eテレなど多数メディアに出演。2016年にオンライン家庭教師「まなぶてらす」を設立し、多様な学習ニーズに対応するサービスを運営。

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▼ 坂本七郎の主な著書(中学受験関連)

でる順「中学受験」漢字1580が7時間で覚えられる問題集(大和出版)
中学受験は2科目だけ勉強すればいい(ナツメ社)




ABOUT ME
オンライン家庭教師「まなぶてらす」
単発・短期から受講できる 小・中・高校生のためのオンライン個別指導サービス。授業はすべて対面式のマンツーマン。<指導科目> 5教科、中学受験、高校受験、大学受験、そろばん、プログラミング、英会話、理科実験、ピアノ、将棋、作文など。まなぶてらす