家族で今日から始める地震の備え——荷物を背負って2.8km歩いた夜から学んだ避難袋・備蓄・連絡ルール
※本記事には「まなぶてらす」のサービス紹介が含まれます
「まあ大丈夫だろう」と思いながら、防災グッズを整えていない家庭は少なくありません。でも、能登半島地震を実際に経験した石川県在住の講師・たくと先生は言います。「準備しているつもりだったのに、あの夜は荷物を背負って2.8kmを歩くことになった」と。
この記事は、地震が起きた「後」ではなく「前」に家族で決めておくべきことを、実体験をもとに整理したものです。避難袋・備蓄・通信・家族ルールの4本柱を、今日から確認できる形でまとめました。
持ち出すものより「持ち出せるか」が先——荷物を背負って夜道を2.8km歩いた夜
たくと先生(石川県在住・能登半島地震経験)
オンライン講師なので、パソコンや通信機器は絶対に持ち出そうと思って、車に積んで実家の家族がいる避難所へ向かっていました。でも移動中に車がパンクして動けなくなってしまって。暗い夜道を、パソコンとポータブル電源を背負いながら2.8kmほど歩くことになったんです。「備えてきたつもり」が、荷物の重さとして全部のしかかってきた夜でした。あまりいい思い出ではありません。
この経験から分かることは、「何を持ち出すか」より先に「それを持ち出せる状態にあるか」を確認することの大切さです。
持ち出し袋のよくある失敗は「とにかく詰め込む」こと。重くなりすぎた袋は、いざというときに持ち出せないか、持ち出しても途中で体力を奪います。目安は成人で10〜15kg以内、子どもは体重の10〜15%。背負って1〜2km歩けるかどうかが実際のラインです。
持ち出し袋に入れておきたい優先順位:
- ①通信・電源系:モバイルバッテリー・ポータブル電源(ソーラー充電対応)・ポケットWi-Fi
- ②飲料水:最低500ml〜1Lのペットボトル(自販機は売り切れる)
- ③現金・身分証:小銭含む現金、免許証・マイナンバーカードのコピー
- ④情報端末:スマホ・タブレット(充電済み)
- ⑤防寒・衛生:アルミシート、マスク、常備薬
持ち出し袋は「玄関のすぐ手の届く場所」に置くことが最優先です。内容物が完璧でも、押し入れの奥では持ち出せません。
通信が「突然つながる」瞬間を逃さない——電源確保が最初の関門
たくと先生(石川県在住・能登半島地震経験)
私が住んでいたエリアはさほどひどくなかったのですが、電源の確保にはとても苦労しました。通信は頻繁に途切れて、でも時々突然つながる瞬間があって——そのときに一気にメッセージの着信が溜まったものが届く、という状況でした。まなぶてらすの先生方の中には、私の電源状況を心配してメッセージを控えてくださっていた方もいて。地震直後から何度も安否確認の連絡をくれたのは、坂本先生でした。
この体験が教えてくれる備えは2つです。
①ポータブル電源はソーラー充電対応を選ぶ。停電が長引く場合、コンセントでの充電ができなくなります。ソーラーパネルと組み合わせることで、電力の自給が可能になります。なお、最近は安価なポータブル電源が増えていますが、粗悪品は過充電・短絡による発火・爆発リスクがあります。多少高くても、信頼できるメーカーのものを選んでください。
②「通信が突然つながる瞬間」を想定してメッセージを準備しておく。事前に「〇〇にいます。無事です。次に連絡できるのは〇〇の頃になります」という定型文を家族・職場ごとに準備しておくと、わずかな通信可能時間を最大限に活かせます。
まなぶてらすでは、緊急時にも対応できる安全ガイドラインを整えており、講師・生徒・保護者が共通の基準で行動できる体制を設けています。
坂道に停まった車の列と、売り切れ続きの自販機——避難経路は「頭の中」だけでは足りない
たくと先生(石川県在住・能登半島地震経験)
ちょうど津波の危険もあったので、高台や坂道のあるところごとに、多くの車が停まっていたことが印象に残っています。重い荷物を背負いながら歩いている中で、のどが渇いて自動販売機を探したんですが、どこに行っても売り切れ状態で。水分を確保できないまま歩き続けることになりました。「このくらいの距離なら歩ける」という感覚と、実際に荷物を持って夜道を歩く体力は、全然違います。
「避難経路を知っている」と「実際に避難できる」は別物です。確認しておきたいポイントを整理します。
①複数のルートを確認しておく。メインの道が車で埋まる・道路が断層でふさがれるケースがあります。徒歩でも行けるルートを事前に確認しておきましょう。
②避難先には「水」を持って行く。たくと先生の体験のように、移動中に自販機が全て売り切れになることがあります。持ち出し袋に最低500mlの水を入れておくことは、「たかが水」ではなく体力と判断力を守る備えです。
③「避難場所」と「家族の合流場所」は別に決めておく。公式の避難所と、家族が「とりあえずここに向かう」という中間合流点を2段階で決めておくと、通信できない状況でも家族がバラバラになりにくくなります。
家族で決めておく「水・食料・情報」の3つのルール
たくと先生(石川県在住・能登半島地震経験)
今は実家の家族と、水や食べ物を一定数確保しておくことが習慣になりました。それと、場所ごとに「ここに湧き水がある」「あのエリアではこういう形で物々交換が行われていた」といった情報を意識して入れるようにしています。災害時に一番頼りになるのは、実はネット上の情報より、地域の中にいる人から入る「現場の情報」でした。
たくと先生の体験が示すのは、「備蓄は数字だけでなく地域ネットワーク込みで考える」という発想です。具体的な家族ルールとして確認したいことを3つ挙げます。
①水・食料は「使いながら補充する」ローリングストック法で。防災のためだけに別保管すると賞味期限切れに気づかず無駄になります。普段の食料・飲料水をやや多めに買い、使ったら補充するサイクルが長続きします。目安は1人あたり飲料水3L×7日分、食料は3〜7日分。
②地域の「水が湧いている場所・助け合いポイント」を知っておく。公園の井戸、神社の手水、農業用水路、地域の防災倉庫の場所などを事前に把握しておくと、断水時に行動の幅が広がります。
③「物が届く前提」を捨てる。コンビニ・スーパー・宅配・電子決済——これらが全て止まる期間が数日〜数週間続く可能性があります。現金(小銭含む)と、自分の身分証のコピーを防災袋に入れておくことを習慣にしてください。
金沢駅で泣きそうになった日——「当たり前」が当たり前でなくなるとき
たくと先生(石川県在住・能登半島地震経験)
都会から里帰りしていた友達が、震災後に東京に戻るというので金沢駅まで送っていったんです。ずっと被災地にいた自分は、水がない・トイレが不十分・用を足すのも苦労する環境に、いつの間にか慣れていました。でも金沢駅に着いたとき——蛇口をひねれば水が出て、電気がついていて、普通に食事ができる飲食店がある。その「当たり前」が目に入った瞬間、泣きそうになったんです。子どもたちに伝えたいのは、今自分たちが生きている環境がいかに恵まれているかということです。
この話は、子どもへの防災教育の本質を突いています。「備蓄のリストを覚えさせる」より先に、「今の環境が当たり前ではないことを感じる体験」を積み重ねることが、本当の防災意識につながります。
子どもと一緒にできる「感覚を育てる」取り組み:
- 「停電ごはん体験」:電気を使わずにカセットコンロだけで1食作ってみる
- 「断水シミュレーション」:蛇口を使わない時間を1時間設けて、何に困るかを話し合う
- 「現金だけの買い物」:電子決済を使わずに買い物をする体験
不便さに体が慣れることで、いざというとき「こうすればいい」と体が動きやすくなります。「防災の話をする日」を年1回でも作っておくことが、最大の備えかもしれません。なお、「地域の防災マップを作る」は夏休みの自由研究テーマとしても人気があり、子どもが防災を自分事として考える良いきっかけになります。
今日から揃えたい防災グッズ——ポータブル電源選びの注意点も含めて
たくと先生が「これは絶対必要」と挙げるものを中心に、優先度別に整理しました。
防災グッズ 優先度別リスト
| 優先度 | アイテム | ポイント |
|---|---|---|
| ★★★ | ポータブル電源(ソーラー充電対応) | 信頼メーカー品を選ぶこと。粗悪品は発火リスクあり |
| ★★★ | ポケットWi-Fi(充電済み) | 固定回線が止まってもモバイル通信を確保 |
| ★★★ | スマホ・タブレット(フル充電) | 情報収集・連絡の両方を担う |
| ★★★ | 飲料水(最低500ml〜1L) | 自販機は発災直後に売り切れる。必ず袋に入れておく |
| ★★☆ | 現金(小銭・紙幣) | 停電中はカード・電子決済不可。千円札×数枚+小銭 |
| ★★☆ | 身分証のコピー | 免許証・マイナンバーカードのコピーを防水袋に |
| ★★☆ | 懐中電灯・ヘッドライト | 手が塞がる状況に備えヘッドライトが特に便利 |
| ★☆☆ | 救急セット・常備薬 | 処方薬は多めにもらっておく習慣を |
特にポータブル電源は「安いから」で選ぶと危険です。2023年以降、格安ポータブル電源の発火・爆発事故が国内でも相次いで報告されています。JIS規格適合品、または信頼できる国内外メーカー(Jackery・Anker・EcoFlow等)の製品を選んでください。
まなぶてらすで自由研究・防災テーマのサポートができる先生
理科・社会・探究学習に対応でき、子どもの「なぜ?」を一緒に深めてくれる先生が在籍しています。防災をテーマにした夏休みの自由研究のサポートにも対応可能です。

うえむら 先生
高校地学・自然災害の専門家。元国立極地研究所助手・南極越冬観測(地学)参加経験あり。地震・火山・気象など自然災害のメカニズムを専門的に解説。中学理科・高校地学の受験対策から自由研究まで対応。

しんじ 先生
高校理科・探究学習・自由研究指導の専門家。元高校教員21年・のべ3,000人以上を指導。「防災を自由研究のテーマにしたい」「探究学習でまとめたい」という生徒のサポートが得意です。
よくある質問
- Q. 防災袋はどこに置いておくのがベストですか?
- 玄関のすぐ手が届く場所が最優先です。押し入れや棚の奥では、暗い・焦っているという状況下で取り出せないことがあります。玄関のドア横・シューズクローゼットの外側など、「ドアを開けた瞬間に手が届く場所」を目安にしてください。
- Q. ポータブル電源はどれくらいの容量が必要ですか?
- スマホ(約4,000mAh)を複数回充電し、ランタンやタブレットも使うことを想定すると、20,000mAh(約72Wh)以上が現実的な目安です。ソーラーパネルと組み合わせれば停電が長期化しても対応できます。容量より先にメーカーの信頼性を確認してください。
- Q. 子どもと一緒にできる防災準備はありますか?
- 「停電ごはん体験」「断水シミュレーション1時間」「現金だけで買い物」など、日常の中で不便さを体験する小さなトレーニングが効果的です。また、家族で「地震が来たらまずどこに集まる?」「連絡が取れないときはどこで待つ?」を話し合う機会を年1回でも設けることをお勧めします。
- Q. 水や食料はどれくらい備蓄すればいいですか?
- 内閣府の防災情報ページでは「最低3日分、できれば1週間分」を推奨しています。飲料水は1人1日3Lが目安。食料はカセットコンロで調理できるもの・缶詰・レトルトを中心に、家族人数×7日分を「ローリングストック(使いながら補充する)」方式で管理するのが長続きするコツです。
まとめ
「備えてきたつもり」でも、荷物が重すぎれば2.8kmの夜道で体力を奪われます。水が1本あれば違った夜道も、自販機は全部売り切れでした。備えは「リストを作ること」ではなく、「実際に使える状態にあること」です。
たくと先生(石川県在住・能登半島地震経験)
金沢駅で泣きそうになったあの感覚は、今も忘れていません。蛇口から水が出る、電気がついている、ご飯が食べられる——それが「当たり前」ではないことを体で知っている人間として、子どもたちには伝え続けたいと思っています。今日この記事を読んだあとに、家族で「防災の話をする10分」を作ってみてください。それだけで、備えは確実に一歩前進します。
この記事の著者
たくと先生
まなぶてらす講師・石川県在住
2024年1月1日の能登半島地震を経験し、避難所生活を送る。復帰後も余震の続く中でオンラインレッスンを再開し、子どもたちへの防災教育の大切さを伝え続けている。
この記事の監修者
坂本七郎
まなぶてらす代表・家庭学習コンサルタント
5,000人以上の保護者への学習相談実績を持つ家庭学習の専門家。著書15冊(累計26万部以上)。2016年にオンライン家庭教師「まなぶてらす」を設立。

